中国の「ピッチ幅を狭める」奇策も粉砕 日本代表「3-1」で勝利のウラで浮上した疑問点
左サイドが機能しなかった日本
なかなか「地上戦」でゴールを奪えなかった日本だったが、中国戦では「飛び道具」で主導権を握った。セットプレーである。これまでの日本はなかなかセットプレーからゴールを奪えなかったが、この日は前半39分に左CKで小川がスタンディングからのジャンプヘッドで強シュートを突き刺して先制。小川自身、サウジアラビア戦に続くCKからのゴールであり、前半アディショナルタイムには右CKから板倉滉がヘッドで追加点を決めた。 こうなると欲が出てくるもので、あとは久保あたりが直接FKを決めてくれると日本の攻撃もバリエーションが広がると思ったが、そう簡単に決まるものではないようだ。 日本は後半の立ち上がりに今予選を通じて初めて対戦相手にゴールを許した。カウンターから最後はフリーにしての失点だったが、対応が後手に回った“日本らしくない”プレーの連続による失点だった。 インドネシア戦では左サイドからの攻撃で日本は主導権を握った。しかし中国戦では効果的な攻撃を仕掛けられない。それは田中と守田のキャラクターの違いなのか、三苫薫と中村のドリブルの違いなのか。あるいは左インサイドハーフに入ったものの簡単なパスミスが散見された南野拓実が機能していないのか。
南野のスタメン起用は疑問
左サイドを活性化させるには、インドネシア戦のように南野に代えて前田大然を入れて、彼を前に出すのも一つの策と思った。しかし森保監督は、そんな「対処療法」ではなく大きく試合を動かす交代策を選択した。南野に代え鎌田、中村に代え三笘という決断である。そしてこの交代は見事にハマった。 とりわけ鎌田である。時には最終ラインに下がってボールを受けたり、ミドルサードでタメを作ったりと、プレーに派手さはないし飄々とプレーしているが、彼が入ることで田中がアグレッシブに攻撃に加われるようになった。本来の田中というか、彼のストロングポイントが引き出された。そして田中だけでなく遠藤航も“時間を作る”パスを出しやすくなった。鎌田は攻撃の潤滑油になると同時に、守備陣にも安定感をもたらした。 11月のアウェー2連戦は、左インサイドハーフは攻守に試合をコントロールできる鎌田、右のインサイドハーフは突破力とキープ力に長けた久保が最適であり、両ウイングバックも対戦相手にプレッシャーをかけ、アシストという結果を残した三苫と伊東がファーストチョイスであることを証明した。 南野は、現代表では最多となる24ゴールを決めている。得点感覚とボックス内での落ち着いたプレーはさすがである。しかし今回の2試合を見る限り、攻撃のビルドアップにおける貢献度は高いと言えない。消えている時間が長すぎるのだ。天才的であることに変わりはないだけに、彼をスタメンではなくジョーカー的な起用法を森保監督も一考すべきではないだろうか。
六川亨(ろくかわ・とおる) 1957年、東京都生まれ。法政大学卒。「サッカーダイジェスト」の記者・編集長としてW杯、EURO、南米選手権などを取材。その後「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。 デイリー新潮編集部
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