「誰でも」入れる公園やトイレは危険?プロが教える安全な景色とは
千葉県で小学生の女児を殺害したなどとして元保護者会長が逮捕された事件を受け、子どもの安全をどう守るか関心が高まっている。そのような中、犯罪学を研究してきた立正大学の小宮信夫教授(61)が、7年かけ、世界92か国を回って撮影した、世界初の防犯写真集「写真でわかる世界の防犯」(小学館)を刊行した。写真家や、ジャーナリストではなく、研究者の視点で、防犯に効果的な街の風景を切り取った約200枚の風景写真が収められている。 この写真集で伝えたいことを小宮教授に聞いた。
子どもの安全を守るためには「囲む」「場所を分ける」
──世界中の写真を撮影して、わかったことは 海外では、街や公園、学校を「囲む」ということが意識として刷り込まれていて、自然と入りにくい構造になっている。これは歴史を紐解くと、戦争や襲撃から民を守るため、大陸の国は、街を壁で囲む「城壁都市」が一般的だったことが背景にある。日本では垣根がなく、誰でもその場所を使えるのを良しとする傾向がある。これは島国だったことが関係している。 例えば日本では、公園といえば、大人も子どもも垣根のない同じ空間で過ごし、外から入るのも容易だ。遊具のすぐそばのベンチで子どもを物色していても、遊具に近づいても怪しまれない。
この写真を見てほしい。このアルゼンチンの公園では遊具の周りは柵で囲まれ、近くにベンチはなく、植木もない。海外では公園で遊具の周りはしっかりと柵で囲まれている。入りにくく、親以外の大人がそばにいれば不自然に思われる。無関係な大人が座れるベンチもなく、遊具の周りには見通しが悪くなるので植栽を減らしている。大人の休む場所にはベンチが置かれ、緑も多い。大人と子どもが過ごす場所がしっかりと分けられている。子ども専用のスペースに見知らぬ大人がいることが不自然に感じられることによって防犯効果が高まっている。
また、こちらの写真を見てほしい。韓国では身体障害者用のトイレでも男女が分けられている。日本で最近増えている「誰でもトイレ」。公衆の場でよく見られるが、誰でも入れるということは、後ろをつけられていたとしても不自然ではなく、犯罪の機会を増やすことになる。海外では間違えたふり、を許さないよう、ほかにも男性と女性のトイレを離して設置したり、入り口に大きく男女の絵を描いたりしている。性犯罪をたくらむ者にとって、こうした作りは心理的な壁になる。 「誰でもトイレ」を利用しているLGBTの方がいるかもしれないが、トランスジェンダーの人以外は男性用・女性用トイレを使うことに問題はないはずだ。トランスジェンダーの人専用のトイレを作ることが理想的で、男女のトイレを一緒にすればいいということではない。