選択的夫婦別姓「旧姓の通称使用拡大で不便解消」 25年前産経記事、今も変わらぬ論点
選択的夫婦別姓に賛成する勢力が衆院選で議席を伸ばしたことで、制度の導入が現実味を帯びている。産経新聞は平成11年1月24日付(東京本社版社会面)で「夫婦別姓『女性だからこそ反対なんです』 家族一体感守るのが務め」と題した記事を掲載し、反響を呼んだ。別姓導入に反対する女性たちが提起した「旧姓の通称使用を拡大すれば不便や不利益は解消できる」という論点は、25年たっても変わっていない。 【写真】平成9年5月、高市早苗衆院議員ら国会議員や有識者を招いて開かれた緊急集会 ■「親子別姓、家族別姓制度だ」 記事では、〝家族を守る妻の責任〟〝子供を愛する母性〟といった立場からファミリーネームを守るべきだと主張している女性のグループから話を聞いた。 後にジャーナリストとして活動する岡本明子さんは別姓制度について、「初めは、そういう考え方もあるのか、という程度でした。『選択制なんだから、同姓にしたかったらそうすればいいし、そうしたくない人たちも認めてあげればいい』と思っていたんです」と話した。 だが、夫婦別姓だと、子供は父か母どちらかの親と姓が違うことになる。つまり親子別姓、家族別姓制度なのだということに気が付き、「おかしいな」と感じるようになったという。 「親と名字が違うことを子供はどう思うでしょうか。選択制とはいえ戸籍上も別姓を認めれば、同姓家族、別姓家族が入り乱れ、家族の絆が失われる。日本の血縁共同体の崩壊につながると分かったのです」と語った。 岡本さんたちは平成9年3月、別姓問題の論点をまとめた「ちょっとまって! 夫婦別姓」(日本教育新聞社)を出版。同年5月には参院議員会館で「ちょっとまって!夫婦別姓 女性だって反対よ」と題した緊急集会を開催。高市早苗衆院議員ら30人近い国会議員や有識者ら約400人が集まり、別姓導入に反対する102万人余りの署名を自民党の山崎拓政調会長(当時)に届けた。 「別姓推進派の弁護士や学者の先生たちと違って、反対している〝声なき多数派〟は、家事や育児に追われる生活者で、運動とは無縁の人が多い」と岡本さんは話した。元小学校教諭の彌吉路(やよし・みち)さんも「共同体よりも個人をことさら強調する勢力や行き過ぎたフェミニズムを信じる人たちが『職場で不便だから、結婚しても旧姓を使いたい』という〝穏健な別姓容認派〟を巻き込んで別姓導入を推進している」と分析した。 2人は「家族の在り方を定める民法を改正して戸籍を別姓にしなくても、労働省(当時)などが職場での旧姓使用を妨げないよう求める通達を出すことで不利益が解消される」と訴えていた。