選択的夫婦別姓「旧姓の通称使用拡大で不便解消」 25年前産経記事、今も変わらぬ論点
■「結婚制度の崩壊につながる」
当時の記事に掲載された「夫婦別姓問題の主な論点」は次の通り(データは最新の数字に改めた)。
《職場での旧姓使用》結婚で姓が変わることによる不利益を解消するため、旧姓の使用を認める官公庁や企業が増えている。連合の令和4年の調査では、職場で旧姓の通称使用が認められていると答えた人は42.3%だった。人事規則で解決できる問題を、法務省が民法改正による別姓制度導入にこだわっていることについて、ジャーナリストの千葉展正氏は「それは労働省の管轄になり、法務省の出る幕はなくなるからである」(家族問題懇話会「ウソで固めた夫婦別姓」)と指摘している。
《アイデンティティー》別姓推進派は「氏名はその人のアイデンティティーを表すものなので、夫や妻の姓への変更を強制すべきでない」と主張するが、反対する人たちは「そもそも姓は親のものだし、名も親に命名してもらったものではないか」と反論。エッセイストの木村治美さんは「たんに『結婚して姓が変わりました』でゆらぐアイデンティティーやプライバシーなんていらない。もっと人間の、人生の、内面を問う姿勢がほしい」(洋泉社「夫婦別姓大論破」)と言う。
《結婚制度の崩壊》別姓によって、法律婚と同棲の違いが事実上なくなることが結婚制度の崩壊につながると危惧する声が強い。一方、推進派の中心的役割を果たしている参院議員で弁護士の福島瑞穂さんは、別姓導入だけでなく、入籍すらしない「事実婚」を奨励している。ロシア革命直後、ソ連では結婚の届け出を廃止し「事実婚」制をとったが、性的快楽のために結婚・離婚を繰り返す男性が続出するなど社会は混乱した。福島さんは「事実婚主義がはっきり採用されていたとは素晴らしい」と評価、「『届け出婚』や『法律婚』というと、ベッドの上でならんで寝ている2人の間に、『国家』がにゅっと出現してくるような薄気味悪ささえ感じる」(岩波新書「結婚と家族」)としている。(渡辺浩)