ビル・ゲイツにザッカーバーグも! アメリカの富豪起業家が目指す、未来を見据えた教育改革
事業で大成功を収めた4人の起業家による教育改革への惜しみなき資金供与は、その額もスケールも桁違いである。アメリカの教育行政に影響力をもつ起業家の取り組みから、民間支援の可能性を考える。現在発売中のPen最新号『新しい学校』より抜粋して紹介する。 【イラスト】教育に力を入れる、アメリカの富豪起業家4人
アメリカでは富裕層が財団を通して教育支援する伝統がある。なかでもネット時代に生まれた新しいリーダーたちは「拡張する教育改革」を目指すのが特徴だ。政策提言やロビー活動に加え、エビデンスを集めるリサーチやチャータースクール(※)設立、運営支援、カリキュラム策定、教材やツールの開発、支援団体への補助金、メディアの運営といった幅広い活動に資金提供や投資を行う。 動機はさまざまであるが、日本以上に学歴社会の傾向が強いアメリカにおいて、大学卒業資格の有無による生涯年収の格差は大きい。貧困層や黒人・ラテン系移民・アメリカ先住民層などでは進学格差も大きく、公的教育の改革が必要とされている。 一方で学校教育という継続性や福祉機能をもった機関を民間企業のように扱うフィランソロピスト(社会貢献や慈善活動を積極的に行う人)たちへの批判もある。その理由は、実験的な教育アプローチが失敗した時のリカバリーの難しさ、大量資金提供によっていままでの取り組みが犠牲になる可能性があることなどである。 公教育の予算捻出を国民の固定資産税に依存するアメリカならではの構造的な事情もあるが、日本の公的教育も、教員不足や不登校など課題が山積み。民間リソースを活用した新しい学校の創設に、ますます着目すべきだ。 ※公設民営による新しい学校の仕組み。各校が設定した憲章(チャーター)をもとに学校設立の認可を得る。州ごとに仕組みは異なるが、運営費用は公的資金でまかなわれる。
ビル・ゲイツ
テック企業起業家の先例ともなっている、財団を通じた教育改革への巨額支援 2000年に創設されたビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団は、チャータースクールを中心に公教育改革に資金提供を行っている。オバマ政権下に制定された全米教育指針「コモンコア・スタンダード(数学と英語について、学年ごとに到達すべきレベルを全米共通で定めたもの)」では3億ドル近くの拠出をした。22年からは、マイノリティや低所得者層で特に大きな課題となっている数学教育の教材、カリキュラム、チューターや教員の研修、リサーチといった分野に支援を行っている。統計学やデータサイエンスといった、実学的分野に優先的に投資を行う方針だ。