冬眠遅れ?熊の出没続く 記者も目撃、車行き交う夕刻の道
今月も被害止まらず
熊による人身被害が相次ぐ中、冬眠期に近づく11月も人の生活圏での出没や被害が止まらない。専門家は、人を恐れない熊が餌を探し回ることで冬眠が遅れる恐れもあると指摘。環境省は都道府県を通じ、農家を含む地域住民に、熊を誘う恐れのある農作物残さの除去徹底などを促す。 【助手席から撮影】行き交う自動車の前を横切る熊 1日午後6時半過ぎ、秋田市上新城道川の路上で、親子とみられる熊3頭が出没。市内中心地の北部、周囲に山林や農地が広がる地帯で行き交う自動車の前を横切り、山中に入っていった。 自動車の中から3頭を見かけた男性(62)は「いつも通っている道路だが、まさかここで見かけるとは思わなかった」と話す。 秋田県内では10月末までに全国最多の61人が被害に遭っている。
長野県大町市は、3日にキノコ採りをしていた男性(50)が熊に頭をかまれて病院に搬送されたことを受け、「クマ出没警戒警報」を発令した。 市内では2022年までの2年間、熊の人身被害は発生していなかったが、市は「今年は目撃数が増えており、引き続き警戒が必要」(危機管理課)と話す。9日までの警報発令期間中は、特に果樹園で餌となる農作物を放置しないよう促す。 6日午前5時半ごろ、新潟県新発田市滝沢の山林で、40代の男性が自宅裏に設置した動物用わなの状態を確認しに行ったところ、近くにいた熊に襲われ、顔や背中にけがを負った。男性は市内の病院に搬送され、口内を負傷し話せない状態だが、意識はあり自力歩行も可能だという。県警によると、現場は男性の自宅から約50メートル。
ドングリ凶作 まだまだ要警戒
熊の人身被害は例年10月に増えるが、11月も発生している。環境省によると、年間を通じて被害が多発した19年は11月に32人、20年も20人が被害に遭った。 11月も警戒を促すため同省は1日、都道府県に注意喚起を促す通知を発出。出没・被害情報の地域内での共有や放任果樹の管理などを改めて呼びかけた。 熊の餌となるドングリは各地で凶作傾向にある。同省によると、10月下旬時点でブナは15都道府県、ミズナラは14都道県で凶作が見込まれ、いずれも前年より多い。熊が冬眠前の餌を探して人の生活圏に近づく可能性もある。
残さ・果実放置 引き金に
熊の生態に詳しい東京農業大学の山崎晃司教授は「山中に餌がないと諦めて早めに冬眠するが、人を恐れない熊が人の生活圏で餌を探し回ることで冬眠が遅れる可能性がある。11月も警戒が必要だ」と警鐘を鳴らす。 「暖冬の影響よりも、屋外に餌となる食べ物が放置されていることが冬眠遅れの引き金になる」と指摘。「熊を冬眠に仕向ける対策が重要」として、実がなったままの柿や畑の野菜残さを残さないなどの管理を促す。人家近くの道路や畑、用水路周辺の刈り払い、既に出没した場所での電気柵設置などを提起する。
日本農業新聞