トラックとターボは切っても切り離せない関係! 燃費とパワー&トルクを両立するダウンサイジングディーゼルターボが万能選手だった
1980年以降ターボ搭載車が次々登場
ターボチャージャーとは過給機のこと。日本では1980年ごろに高級乗用車に搭載されたのが最初である。エンジンの排気ガスを利用してタービンローターを回転させ、その力で空気を圧縮してエンジンに空気送り込むという仕組み。これにより、エンジンの吸入空気量を増やして出力向上を図るわけだ。 【画像】11リッターとか13リッターとかそれでもダウンサイジングされている大型トラックやバスのエンジン この技術は、もともと機関車、航空機、船舶を対象として開発されたもので、これらのエンジン出力向上を目的としていた。それまでの技術では「エンジン出力向上=排気量増加」が基本的な考え方であったため、必然的にエンジンが大型化する。結果として、重量の増加や燃費、環境の悪化につながっていた。こういった問題を解決(ただし、自動車用ガソリンターボ車は、異常燃焼、早期着火によるノッキング対策で燃費が低下する)するには、うってつけの技術であったといえよう。 日本の自動車税は排気量を基準としてランク付けがなされており、2リッターがひとつの区切りになっている。また、1980年ごろからバブル経済崩壊期にかけて、ハイパワー車のブームが到来していた。こういった背景から、その時期に2リッターを超えない高出力車の需要が高まったことで、1980年以降にターボ搭載車が次々に登場したのだ。 自動車のターボチャージャーは使用目的が「エンジンの高出力化」にあったため、バブル経済崩壊以降は、 ・2リッター超えの自動車が一般化(バブル経済期の申し子)し、ターボによる高出力化の需要が低迷 ・景気の悪化や省燃費機運の高まりという社会的背景 などにより徐々に下火になっていった。これに対して、ディーゼルエンジンはターボチャージャーと相性がよく、トラックや建設機械には現在に至るまで積極的な搭載が続いている。
環境問題への対策としてディーゼル車をターボ化
一方、1999年に当時の東京都知事がディーゼル車の公害問題を可視化したことで、ディーゼルトラックの環境問題が大きくクローズアップされた。当初は排気ガス処理技術が中心であったが、バブル経済崩壊以降から続く不況で、トラック業界では省燃費を求める声が高まっていった。そこで、排気量を下げるダウンサイジングが注目を浴びるようになったのである。 これは、ベースとなるエンジンの排気量を下げることで、使用燃料の減少、排出ガスの抑制を図ろうというものだ。ただ、前述のとおりターボは低回転域では威力を十分に発揮できない。そこで、可変ノズルターボが登場したのだ。これは、エンジンの回転数に応じて排気タービンハウジング内の排気ガス通路面積を変化させることで、過給効果を高める仕組み。エンジンが低速回転をしているときには排気ガスの流速を上げて過給効率を高め、高速回転時には流速を下げて損失を減らす効果がある。 このターボチャージャーと、ダウンサイジングしたディーゼルエンジンを組み合わせることで、低回転域から高回転域に至るまで必要なパワーを生み出せるようになったのだ。また、ターボチャージャーは減速後に再加速した際、コンプレッサーが機能するまでの遅延時間(ターボラグ)が発生した、これにより、部分的な空気不足が発生することからPM(粒子状物質)が多く発生していたが、これも同時に解決したことで環境対策にもなっている。 将来期待されている大型トラックのEV化は、必ずしも明るい見通しというわけではない。世界的な化石燃料不足や環境問題を抱えながらも、当面はディーゼルトラックが陸上物流を支えなければならないのだ。こういった技術の進化によって、少しでも環境負荷が小さいディーゼルトラックが、生み出されることを願ってやまない。
トラック魂編集部