南海トラフ臨時情報に翻弄された「日向国」、日向坂46フェスが照らす…経済効果30億円
温暖な気候を生かし、「日本のひなた」として売り出し中の宮崎県で開かれた人気アイドルグループのイベントが話題だ。地元の有志や自治体が総出で歓迎したこともあり、30億円近い経済波及効果をもたらしたのだという。今夏、南海トラフ地震の臨時情報に翻弄(ほんろう)された日向国(ひゅうがのくに)を照らした光に、試算した専門家も「新たな観光の核に育つ可能性を秘めている」と注目する。(浜崎大弥)
♪パレードに人、人、人
アイドルグループ「日向(ひなた)坂46」による単独音楽イベント「ひなたフェス2024」。初日を迎えた9月7日、会場のひなた県総合運動公園(宮崎市)はファンでごった返した。2日間の会期中、ひなたサンマリンスタジアム宮崎でのライブや、メンバーによるパレードはにぎわいを見せた。
イベントは、日向坂46がかつて宮崎でロケをしたことが縁で実現した。スタジアムの天然芝に与える影響を考慮し、これまではスポーツ以外の使用を認めていなかったが、甲子園球場(兵庫県)でグラウンド整備を担う企業からも助言を得て万全の態勢を敷いた。県観光推進課は「スタジアム活用の幅が広がった」とし、「今後もフェスの開催を含めて宮崎の観光振興に協力してほしい」と期待する。
♪おもてなし官民で
プロ野球・読売巨人軍のキャンプ地としても知られる宮崎だが、9月は観光の閑散期にあたる。前月には政府が南海トラフ地震への注意喚起を行ったばかりで、観光業界は大打撃を受けていた。フェスの恩恵に期待した宮崎市はPR支援費として約900万円を予算化。日向市はグループの協力を得て、観光名所の展望台近くの坂道に「日向坂」の名をつけてファンを迎えた。
県は27人のメンバーを「みやざき大使」に起用し、ひとりずつ登場する27種類のポスターを作った。市町村ごとのオリジナル仕様とし、ファンに各地を巡ってもらう趣向が評判を呼んだ。
「おもてなし」のあり方を話し合ったのは、県内の飲食業者や学生らだ。ファンを歓迎する飲食店や過去のロケ地を紹介するマップを作成し、会場には土産品を販売するブースもお目見えした。勉強会を企画した飲食店「若草HUTTE」(宮崎市)オーナーの今西正さん(46)は「『宮崎を好きになった』という声も寄せられ、準備してきてよかった」と振り返る。