千葉・内房総で100年後を考える芸術祭へ。『百年後芸術祭-内房総アートフェス-』レポート。
●袖ケ浦市:〈袖ケ浦公園〉キム・テボン(金泰範)、大貫仁美、東弘一郎
1997年に開通した〈東京湾アクアライン〉はキロメートルが橋梁、キロメートルがトンネルとなっている。中でも海底道路トンネルとしては世界最長のトンネルは水面下60メートル、軟弱地盤と高水圧と戦いながら進められた難工事だった。掘削に使われたシールドマシンは外径14メートルという巨大なもの。土木のアポロ計画とも称される。
袖ケ浦公園にある〈アクアラインなるほど館〉はアクアラインの模型や部品を展示する資料館。キム・テボン(金泰範)はそこに宇宙船のような空間《SKY EXCAVATOR》を日常のありふれたモノを組み合わせて生み出した。作者はアクアラインに使われた技術が近い将来、私たちを未知の宇宙へつれて行ってくれるのではないかと夢想する。 キム・テボン(金泰範)《SKY EXCAVATOR》 袖ケ浦市下新田1133 〈アクアラインなるほど館〉(袖ケ浦公園内)。路線バス「袖ケ浦公園前」徒歩10分。~2024年5月26日。10時~17時(火曜・水曜休)。個別鑑賞券 300円。
千葉県には全国でもっとも多くの貝塚がある。そのことから大貫仁美は古代遺跡で出土する「断片」をテーマにしたインスタレーションを制作した。用途を失った“日常のかけら”には、かかわった人々のささやかな歴史が秘められている。大貫の《たぐり、よせる、よすが、かけら》は金継ぎの手法でつなぎあわされたガラスの断片で衣服をかたどったもの。会場は江戸時代末期に建てられた住宅だ。歴史の断片が幾重にも重なっている。 大貫仁美《たぐり、よせる、よすが、かけら》袖ケ浦市下新田1133 旧進藤家住宅(袖ケ浦公園内)。路線バス「袖ケ浦公園前」徒歩10分。~2024年5月26日。10時~17時(火曜・水曜休)。
自転車を組み合わせた作品で知られる東弘一郎は西上総地方で開発された井戸掘り技術「上総掘り」を復活させた。《未来井戸》は持ち手を動かすと地中でパイプ状の掘削機が上下して井戸を掘るという仕組みだ。もともとは竹で作られていた機械を金属に置き換えている。この上総掘りの技術は半ば忘れられていたため、今では東が一番の使い手と目されているそうだ。来場者は実際に作品を体験して穴を掘ることができる。技術の伝承に一役買うことができるかもしれない。 東弘一郎《未来井戸》袖ケ浦市飯富2360。路線バス「袖ケ浦公園前」徒歩13分。~2024年5月26日。10時~17時(火曜・水曜休)。