きまぐれクック、手がけた塩うにが5分で完売 YouTuberたちが取り組む“地方創生の数々”
YouTubeチャンネル「きまぐれクック」のかねこが長崎県五島市とタッグを組み、地方創生の一環として販売した『きまぐれ塩うに』が、販売開始から5分で完売したことが話題となっている。自身の影響力を活かし、地方創生に大いに貢献したきまぐれクックの取り組みを中心に、YouTuberたちの社会貢献を紹介する。 【写真】かねこが販売し話題になった約66トンのオオズワイガニ (参考:PR TIMES 【地方創生×YouTuber】開始5分で即完売!きまぐれクックが『かねこ道具店』にて『きまぐれ塩うに』の販売を行いました!https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000166.000087236.html) 「きまぐれクック」は運営者のかねこが魚料理の魅力を届けるYouTubeチャンネル。華麗な包丁捌きで幅広い層から支持を集めており、チャンネル登録者数は1210万人を記録(9月29日時点)。日本のYouTuberのなかでもトップに君臨するクリエイターのひとりだ。 そんなきまぐれクックが今回、地方創生の一環として長崎県五島市と協力し、『きまぐれ塩うに』と名付けたガンガゼウニを自身のECサイト「かねこ道具店」で販売。9月26日に初回販売と追加販売の両方において、販売開始から約5分で完売したことが発表された。 (参考:かねこ文具店 食べて貢献!五島列島の海を守る『きまぐれ塩うに』https://kaneko-douguten.com/blogs/news/kimagure_shio_uni_news01) 海藻を食べるガンガゼウニは、磯焼けの原因となる生物。五島列島の海ではこのガンガゼウニが大量に発生しており、以前から藻場が減少する「磯焼け」問題が深刻化しているという。磯焼けが進むことで、さまざまな生物の産卵場や稚魚の成育場所、餌場がなくなり、食物連鎖が崩壊するほか、鮑やサザエの漁獲高の減少に繋がるなど、漁業に甚大な被害をもたらすことになる。今回の『きまぐれ塩うに』は、単に美味しいものをかねこが手がけ、販売したというものではなく、五島市が抱える海洋環境保全と持続可能な漁業の発展という課題解決に向け、大きな意義があったようだ。 実はかねこはこれまでも北海道の漁協と組み、1か月で約66トンものオオズワイガニを販売、一次産業の売上高に貢献してきた実績を持つ。オオズワイガニの取り組みは2023年の冬、同事務所に「オオズワイガニが獲れすぎて困っている」と漁協から相談が寄せられたことをきっかけに始まったもので、かねこの影響力を活かした結果、この一件についての動画再生数が116万回を突破するなど大きな反響があったことは記憶に新しい。 YouTuberの地方創生の取り組みでは、新潟県佐渡市出身の「けえ【島育ち】」(チャンネル登録者数74.7万人)がこれまでに佐渡ヶ島でオフラインイベントを開催し、約2500人が来場したほか、佐渡ヶ島を巡るバスツアーを2回企画・実施。普段から佐渡ヶ島に関する企画で動画を制作しているけえは、「佐渡ヶ島!?サドガシマ……」と叫ぶギャグで小学生から絶大な人気を獲得しており、イベントには子どもとその保護者が全国から訪れている。けえの場合はかねことは異なる地域密着型の社会貢献といえるが、10月に開催される『クールジャパンEXPO in NIIGATA』への出演が決まっているなど、佐渡の盛り上げに一役買っているようだ。 YouTuber界において地域密着型の社会貢献の代表格といえば、愛知県岡崎市を拠点に活動する東海オンエアだ。チャンネル登録者数707万人を誇る同グループは、2016年より岡崎観光伝道師に任命されており、任命は今年で9年連続、9回目。「東海オンエア=岡崎市」というイメージが世間でも定着しているように感じられる。 東海オンエアについては、グループゆかりのスポットをまわる聖地巡礼のためにファンが同市に詰めかけており、その経済効果はなんと年間約40億円ともいわれている。今年3月には、訪れるファンが泊まる施設が足りないことを受け、リーダー・てつやが自らプロデュースを手がけた宿泊施設『ほてる小栁津』を開業。ファンの聖地巡礼を自ら後押しし、大きな話題となった。 (参考:財務省広報誌『ファイナンス』 令和4年12月号https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/202212/202212m.html) 今回の塩ウニ完売という嬉しい結果が出たきまぐれクックだが、けえや東海オンエアの成果を含めてみると、YouTuberたちの地方創生はクリエイターと視聴者との良好な関係性なしには成立しないものであることがわかる。ファンから得た信頼と影響力を、地方創生という形で困っている地域や地元、ファンに還元できるとは、地方創生は三方良し、メリットだらけの活動といえるだろう。
せきぐちゆみ