【新木優子】映画『キングダム 大将軍の帰還』インタビュー「私たちには“心の筋トレ”が足りていない」
難しくも楽しかった、馬たちとのコミュニケーション
ーコロナ禍での撮影は大変だったと思いますが、精神面・体力面でどのように乗り切りましたか? 優子さん 「それが不思議なことに、私に関しては、つらいとか大変とか、まったく思わなかったんですよね……純粋に楽しみながら撮影に臨むことができて本当にありがたかったです。ロケ地が遠かったり、特殊な機材が多かったり、ひとりひとりの兵士の衣装ひとつひとつがすごく大きくて、管理や運搬が大変そうだったりしましたが、スタッフのみなさんのチームワークが本当に素晴らしく迅速で、すごいと思いました。大沢さんや(山﨑)賢人くんたちほかのみなさんは、戦場ロケや長いシーンに臨んだりして、それはそれは大変だったと思います」 ー劇中では、馬に乗って剣を振るうアクションシーンにも果敢に挑まれています。馬との演技はとても大変だと聞きますが、どのようにクリアしましたか? 優子さん 「トップスピードで馬を走らせながら殺陣のお芝居をする、その指示を馬上から出すということがとても大変でした。馬って『この人間はちゃんと信頼できるか?』と常に観察しているんです。なので、馬に対して『私があなたを動かすんだよ』という意思表示をきちんとして、気迫というか意識を強く保っておかないと馬も応えてくれない……とはいえ、一度『つながれたかな?』と思うと、不思議なもので打ち解けて、少しずつ指示をを聞いてくれるようになった気がします」 ー馬たちとのコミュニケーションを経た演技も重要な見どころなのですね! 優子さん 「現場で馬たちと一緒だったからこそ、癒された時間もありました。難しくもありましたが、とても楽しかったです。動物との撮影は好きですね」
『キングダム』出演を通じて学んだ“心の筋トレ”の大切さ
ー『キングダム』には、能力と個性を武器に、男性と同等に戦場で無双する女性キャラクターが多く登場します。優子さんご自身は「摎」がなぜ若年女性の身でありながら将軍に上り詰めることができたと思いますか? 優子さん 「本当に戦いの才能があったからではないでしょうか? そして、天涯孤独の身で、自分の存在意義を自身の中に見出したい一心が、彼女を強くしたのだと思います。“城を100個とったら、王騎さまの妻になる”という目標と、自分とともに戦場で命をかけて戦ってくれる部下の兵士が大勢いることで、家族ができたような感覚を持ったり。戦闘中は無心でこそあれ、“自分はひとりじゃない”と思える瞬間がたくさんあって、そうした絆の積み重ねが彼女を突き動かしていたのだと思います」 ー「昌文君」に「(女なのだし)そろそろ剣を置いたらどうか」と諭されても、彼女は自分の意志で戦場に立ち続けますものね。 優子さん 「『キングダム』は約2800年前のお話ですが、キャラクターがとても“今っぽい”と感じています。“女性だったら家庭を守るべき”という概念がひときわ強そうな時代ですし、秦国の城戸村で尾平(びへい/岡山天音さん)・ 尾到(びとう/三浦貴大さん)兄弟の帰りを待つ東美(とうび)役の桜井日奈子ちゃんや、友里(ゆうり)役の村上絵梨さんは、春秋戦国時代の女性像をすごく素敵に演じられています。しかし、性別や年齢にとらわれず、自分自身のやりたいことに正直に生き、徹底的に信念を貫いた女性たちもいて、そのうちのひとりが「摎」。ほかにも、「河了貂(かりょうてん)」(橋本環奈さん)・「羌瘣」(清野菜名さん)・「楊端和(ようたんわ)」(長澤まさみさん)ら、戦場に出る女性たちも自分自身の人生をたくましく生きています。どちらもとても魅力的です」 ー「摎」役を通じ、また『キングダム』チームに参加して、優子さんが新たに学ばれたこと・感じたこと・今後のキャリア形成に生かそうと思ったことなどがあればぜひシェアしてください。 優子さん 「『キングダム』に登場するキャラクターは、『自分はこういうふうに生きていきたい! この人と一緒に生きていきたい!』という強い意志があるか、それを実現できる行動力や運があるかどうかが生死の分かれ目に直結する過酷な時代を生き抜いています。『将来どうしたいかわからない……』と漠然と思っている人はひとりもいないように思います。 彼らのように、目標に向かってまっすぐ突き進む信念が、現代の私たちには足りていないんじゃないかと思うんです。ふわっとしているからこそ、自由に振る舞えたり、思いもよらないところで自分の役割が見つかったりと、現代ならではのメリットもあると思います。でも、目標達成のためにコツコツ努力して継続したり、挫折してもまた立ち上がったりといった経験を普段から積んでおかないと、本当にやりたいことが見つかってもすぐに失敗したりあきらめたりしてしまって、すごくもったいない。 私は、『キングダム』の世界観を通じて、そうした“心の筋トレ”の大切さを学んだので、観てくださるみなさんにも気づいていただけたらと思います。みなさんの人生をより楽しく・自分らしく生きる大切なヒントになってくれるんじゃないでしょうか? ー30歳の節目に『キングダム』に出演したことは、優子さんの俳優人生にも大きなインパクトをもたらしているのですね。 優子さん 「この作品への出演を通して、また30歳になってから、『年齢って人生のレイヤーだな』とつくづく感じるようになりました。さまざまな刺激を受けて、多くの人のいろいろな思いや価値観に触れたり、学んだりして吸収してきた人生経験が積み重なって、今の自分を形成しています。それをふまえたうえで、自分が今後どういう選択をし、歩んでいくのかがとても大切になると思っています」 ー俳優さんがこんなに熱量を持って参加される作品、本当にすばらしいですね。優子さんと同世代のMORE読者のみなさんに、ぜひメッセージをお願いいたします。 優子さん 「アクションはもちろん、すべての面において映画『キングダム』4部作の集大成となっている作品です。先日のワールドプレミアでもみなさんがおっしゃっていましたが、いきなりクライマックスから始まるんです。『映画の最初からこんな感情になること、ある!?』と、心が揺さぶられるようなストーリーがたくさんたくさん詰まっていて、本当に見応えがあり、映画館でこそ観るべき作品だと思います。ぜひ大きなスクリーンで、映像の迫力や音のすばらしさやダイナミズムを感じ、楽しんでいただけたらうれしいです」