ビタミンの名前の由来は? 日本人も担った発見の黄金時代はなぜ衝撃だったのか
なぜいきなりビタミン「K」?
整然とした命名法則を破ったのはビタミンKだった。1929年にデンマークの研究者、カール・ピーター・ヘンリク・ダムによって発見された。 発見された時期から考えると、もっと早い順のアルファベットが付けられたはずだが、このビタミンは血液が固まるのに必要な物質だった。ダムの論文が掲載されたのはドイツの学術誌で、血液凝固はドイツ語で「Koagulation」だったためビタミンKに落ち着いた(編注:アルファベットや数字に抜けがあるのは、ビタミンの定義に当てはまらなくなったものや、すでに報告されたビタミンと同じだと判明したもの、正体不明のものなどが除外されたからでもある)。 人間に不可欠なビタミンB12が1948年に発見されてから半世紀以上が過ぎた。その間、研究者たちはビタミンの働きや欠乏したときの病気について知り、ペラグラ(ナイアシンの不足で皮膚や消化管などに異常が起きる病気)や貧血などの治療にビタミンを使ってきた。だが今後、重要なビタミンが新たに発見される可能性は低い。 しかし、栄養学的な発見は終わったわけではない。栄養学の研究は現在、かつてないほど進歩しており、人間の健康を左右する極めて微量な栄養素についても研究が可能になっている。 ビタミンが相次いで発見された黄金時代が前菜であれば、研究者たちは今、メインディッシュを食べているところだ。食べ物が私たちの体をどう作り上げているのかについて、一つひとつの微量の物質から急速に理解が進んでいる。
文=ERIN BLAKEMORE/訳=三好由美子