「俺は元の数字が見たいんだ」いきなり本質をつかむ、イーロン・マスク流の問題解決法とは?
■ ディスカッションで答えを探っていく 解決方法を探っていくなかで、私は「本当に人の話をよく聞く人だな」と思っていました。「こういう相関があって、こういう問題があるから、この結果になっている」という説明がついても、イーロンは自分で回答を出さないのです。「じゃあどうしたらいいんだ?」とまわりに意見を求めます。 イーロンには「ああしろ、こうしろ」と細かいところまで指示するトップダウンのイメージがあります。たしかに、大きな流れのなかではそうなのですが、細かいところについては、けっこう任せてくれるのです。というか、人の話を聞いてくれる。提案したことが彼の勘所にちゃんと刺されば、資金のベットにつながり、その後の動きは一瞬です。 たとえば、「eCPMが低いことに問題がある」と言われたら、そういうことが起こる原因を追求していく。そして「数字が一緒に動くはずのところが動いていない。それはなんでなんだろう」という問いを立て、人に回答してもらう。そして、その答えが「これだ」と思えば、一気にそこに向かっていく。これが、問題解決に関するイーロンの一連の動きです。 そして一連の動きは、ディスカッションのように進んでいきます。きちっとしたプレゼンテーションを用意して「日本のeCPMがこうだから」といったものを見せる必要は、ぜんぜんない。そういう点では、すごく人を信じてくれるのです。 イーロンがプレゼン嫌いなんて意外だと思われるかもしれません。 でも彼は共変関係の中から、因果の構造を見抜いて「この原因をどうやって解決していこうか?」とキャッチボールしながら問題を解いていきます。そして「これだ」となったものを実行していく。このやり方を取る以上、一方的な「プレゼン」とは距離が生まれるのは必然なのかもしれません。
笹本 裕