大阪 たこ焼き丼を出す「やしき」はあの歌手の親類の店
阿倍野区・昭和町駅近くのあびこ筋沿い
<街ぶら>大阪のたこ焼き店「やしき」従兄弟はあの歌手 編集:柳曽文隆 レポーター:岡本ゆか 主題歌「たとえば」打越元久
平日の夕方、大阪市阿倍野区にある地下鉄・昭和町駅から御堂筋線の上を南北に走る「あびこ筋」を少し南へ歩くと、下校途中の桃山学院高校の生徒らを多く見かける。同校から同筋をはさんだ向かい側から、なにやらおいしそうな、香ばしいにおいが。よく見ると、ビルの1階にある、たこ焼き店からのものだった。店の前では、おばちゃんや子供らが、焼けるのを待ちながら店の人との会話を楽しんでいる。その光景につられ、店を訪ねてみた。
屋号は「やしき」。あの歌手の従兄弟だった
「もう、ここで店を開いて5年になります」と、たこ焼きをつくりながら話してくれたのは「たこ焼き やしき」(同区阪南町)を経営する家鋪征幸さん(33)。たこ焼きを焼くスペースは一部が外に出ている開放的なつくりになっている。なるほど、おいしそうなにおいが漂うわけだ。 開放的なスペースの隣にあるドアを開け店に入ると、木のぬくもりを感じるカウンターやテーブル、そして黒板が壁にかけられている。なにか懐かしさを思うと同時に、家鋪さんが「これは学校の教室をイメージしてつくったんですよ」と説明してくれた。 そして壁には「やっぱ好きやねん」など数々の名曲で知られ、関西で絶大な人気を誇った歌手、やしきたかじんさんの写真が飾られていた。この店の屋号は「やしき」。家鋪さんに「ご親戚とかですか?」と雑談がてらに話しかけると「はい、従兄弟です」と即答したため、思わず驚いた。 「僕は、たかじんさんのことを『おっちゃん』と呼んでいて、法事とか親戚が集まる時にお見かけしました。もうテレビそのままですわ」と笑顔で当時を振り返る家鋪さん。そういえば、たかじんさんは、店の目の前にある桃山学院高校の出身。特に周知しているわけでもないが、たかじんさんの同級生だった人らも通ってくれるようになったという。
メニューに「たこやき丼」。人気の秘密は?
ソースいらずというダシのきいた、たこ焼きが同店の名物。タコも刺し身でもいける新鮮なものにこだわり、ていねいに焼いているのも特徴だ。元々、たこ焼き店に勤め、仲間だった店長の「いなやん」こと稲岡弘孝さん(31)と一緒に、この店を始めたという家鋪さんだが、味への追求はとまらない。 また、同店は居酒屋としても営業しているため、メニューが豊富だ。そのメニューをみて、真っ先に注目したのが「たこ焼き丼(350円)」の文字だ。家庭によって違うだろうが、大阪で育った筆者の家庭では、たこ焼きをおかずにしてご飯と食べる機会が多々あった。社会人になり関東で勤務していたころは「そんなの信じられない」とよく珍しがられたのを思い出す。 しかし、たこ焼きとご飯を食べるとはいえ、お店で「たこ焼き丼」というのは、あまりお目にかかったことがない。メニューの文字を見た瞬間「ご飯の上に、たこ焼きのせて、ソースをかけるんかな?」と想像し聞いてみたが、家鋪さんはあっさりと否定。注文から数分後に出てきたものは、ご飯の上に玉子でとじたたこ焼きがのっていた。 「まあ、玉子丼を作る工程で、たこ焼きを入れてる感じです。けっこう評判いいんですよ」と家鋪さん。食べてみると、たこ焼きのやわらかい食感と玉子のふんわりした食感が絶妙にマッチし、たこ焼き&ご飯の新たな形を見せつけられたようだった。そして、このご飯を提供しているのが、たかじんさんの一番弟子で、現在は淡路島で米穀店を経営する、打越元久さん。打越さんは、シンガーソングライターとしても活動しており、大阪でのライブの後は、ここに立ち寄り、ファンとの交流を楽しんでいるという。