“ポスト稀勢の里”は見つかったのか?3人の次なる日本出身横綱候補と彼らの死角
3番手は関脇貴景勝。年齢は22歳と申し分ない。昨年九州場所で小結として初優勝し、この初場所も優勝こそ逃したが、千秋楽まで玉鷲と優勝争いを展開した。千秋楽の豪栄道戦で敗れたが、もし勝っていれば、大関昇進の可能性もあった。そんな勢いも高安、御嶽海を上回っている。ところが、こちらも横綱を張るには不安材料がある。 最大のネックは体の小ささだ。公称175センチだが、実際は170センチあるかどうか。平成で横綱は12人いるが、最も背が低かった北勝海、若乃花でも181センチあった。 貴景勝の場合、背の低さによる重心の低さを逆手にとった立ち合いがストロングポイントで、強烈な突き押し、タイミングのいい左からのはたき、激しい動きでまわしを容易に許さない。そんな独特の取り口が対戦力士を悩ませているのは、事実。 しかし、ここ十数年で一気に大型化が進んだ角界において、そのスタイルが果たして通用し続けるのか。日本相撲協会を去った元横綱の貴乃花親方の下、厳しい稽古で培った体力には定評もあるが、昨年九州場所前から千賀ノ浦部屋に移籍し、稽古量が激減したと指摘する関係者は多い。千賀ノ浦親方(元小結隆三杉)は好人物、人の良さで知られているものの、指導力の点では未知数の部分が多い。このまま稽古量が減ってしまうと地力が低下するおそれもある。 平幕力士から候補を探せば、若さや体格に恵まれているという点で朝乃山、豊山、矢後らとなるが、いずれもまだ上位陣との対戦がほとんどなく、安定して力を発揮できずにいる。また昨年初土俵を踏んだ元横綱大鵬の孫である幕下納谷、その納谷と高校相撲の強豪・埼玉栄の同級生である幕下琴手計(ことてばかり)幕下塚原らも将来的な魅力はあるものの、まだ関取にもなっていない。最も注目を集める納谷はここ3場所は3勝4敗、4勝3敗、4勝3敗と早くも壁にぶつかりつつある。 角界は群雄割拠の時代に入った。優勝41回と圧倒的な実績を誇る白鵬も33歳となり、力の衰えが目立ち始めた。その間隙を縫って、昨年初場所の栃ノ心以降、御嶽海、貴景勝、玉鷲と初優勝力士が次々と誕生している。その中で横綱になるためには、まず「直近3場所を三役で通算33勝以上」という目安をクリアして大関に昇進した後、基本的に「大関で2場所連続優勝かそれに準ずる好成績」を残し、横綱審議委員会の推挙、日本相撲協会の承認を得ねばならない。 それがいかに高いハードルか。実際、稀勢の里の横綱昇進も「2場所連続優勝」ではなく、直近2場所が「優勝力士と2差あった準優勝、優勝」でありながら、日本相撲協会と横綱審議委員会の「日本人横綱待望論」に乗って実現している。つまり「文句なし」ではなく、かなり強引に昇進させた訳で、横綱稀勢の里が短命に終わったのは、真の横綱の力量を持ち合わせていなかったから、と言えなくもない。今後は安易な横綱昇進を避けることになるかもしれない。 長い歴史に支えられている大相撲において、次の日本出身横綱を作ることは急務。しかし、現在の顔ぶれ、今後のプロセスを考えると、かなりの難問だと言わざるを得ない。具体的な希望を持てないのが現状なのだ。