Vaundy「ヒロアカ劇場版」主題歌は2曲合わせて完結 / エレン「こんなんで誰が喜ぶのさ」→みんな大喜び
YouTubeでの視聴回数チャートや、ストリーミングサービスでの再生数が伸びている楽曲を観測し、今何が注目されているのかを解説する週刊連載「再生数急上昇ソング定点観測」。今週はYouTubeで7月26日から8月1日にかけて集計されたミュージックビデオランキング、および急上昇ランキングの中から要注目トピックをピックアップします。 【動画はこちら】隣に座ってせーの 萌萌萌萌 こんなんで誰が喜ぶのさ 文 / 真貝聡 ■ まずはこの週の初登場曲の振り返りから 今週のYouTubeのミュージックビデオランキングは、Mrs. GREEN APPLEが7月に開催したスタジアムツアー「Mrs. GREEN APPLE ゼンジン未到とヴェルトラウム~銘銘編~」から「コロンブス」のライブ映像が3位に登場した。28位にも同ライブで披露された「ライラック」がランクインしており、8月6日には「点描の唄」の映像も公開されている。 6位に初登場したのは藤井風「Feelin' Go(o)d」のMV。YouTubeのコメント欄では「この曲を何度も聴いていると、藤井風の限りない優しさに気づく」「なんだろう、この幸福感」など、優しく包み込まれるような幸せが詰まった楽曲に励まされた人の声が多かった。 11位にはXGの「SOMETHING AIN'T RIGHT」がランクインした。7月26日にMVが公開されてから、2週間で730万回再生を突破し、前作「WOKE UP」同様にものすごい勢いで注目されている。 12位はME:Iの「Hi-Five」がランクイン。海や花火をバックに踊るメンバーの姿を堪能できる、夏にピッタリなMVとなっている。 14位は宝鐘マリンの「幽霊船戦」が登場。人気ゲーム「UNDERTALE」の作者であるトビー・フォックスが作曲を務め、「BEMANI」シリーズなど数々の音楽ゲームに楽曲提供をしている、かめりあが作詞・編曲を担当した。MVを制作したのはテレビアニメ「ウマ娘 プリティーダービー」や「スーパーカブ」の映像に参加しているスタジオKAI。楽曲も映像もともに豪華な布陣で制作されたことも話題となっている。 ライブ映像からアニメーションMVまで並んだ今週は下記の3曲をピックアップ。 ■ Vaundy「ホムンクルス」 ※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場37位 映画「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ユアネクスト」でオープニング主題歌とエンディング主題歌を担当しているVaundy。映画の公式サイトでは「今回の曲をつくる上でも、自分の“個性”とは何か、という葛藤を抱きながらつくっていったのを覚えています。ヒロアカのキャラクターたちにどういう風にエールを送ってあげられるか考えて、僕なりの回答を込められたかなと思います」とコメントしている。 7月26日にMVが公開されたオープニング主題歌「ホムンクルス」は、ヒーローと敵(ヴィラン)の全面戦争で荒廃した日本にやってきた男・ダークマイトのセリフ「俺が来た」が歌詞に使われていることからも、ダークマイトを軸にした楽曲のように感じられる。X(Twitter)で映画を鑑賞した人のポストを見ると「主題歌がホムンクルスだから、ダークマイトはオールマイトの人造人間かと思ったら……」などの反応があり、映画を観ると歌詞の意味がより詳しく紐解けるようだ。 オリジナルMVはPerfumeの多くの作品に携わり、サカナクションの「アルクアラウンド」や星野源の「恋」、藤井風の「燃えよ」、RADWIMPS の「愛にできることはまだあるかい」などを手がけた関和亮が監督を担当。主演を務めた山田孝之の圧倒的な演技力と、まるで映画のような壮大なスケール感に魅了される映像だ。 8月6日は同映画のエンディング主題歌「Gift」のMVが公開されており、こちらのオリジナルMVにも関と山田が参加。「ホムンクルス」のMVと並べてみることで、1本の物語が完結する仕掛けになっている。 ■ Official髭男dism「Sharon」 ※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場38位 Official髭男dismの新曲「Sharon」は、カンテレ・フジテレビ系の山岳医療ドラマ「マウンテンドクター」の主題歌。カンテレのプロデューサーが「主題歌は絶対に髭男さんにお願いしたい」と熱烈なオファーを出して生まれた楽曲だ。 ヒゲダンはこのタイアップの発表に際して、同曲について「帰る場所があり、頑張りたい事がある、その幸せと、両立できない悔しさと、その悔しさを背負ってでも叶えたい夢や生きがいがある事 全ての感情の大切さがひとつの模様みたいになって、この曲を作らせてくれたような気がします」とコメント。この曲では「『ただいま』の代わりに扉の声を殺して」や「ただ『気をつけて』と伝え帰りを待ち侘びてた」などの歌詞で、山を舞台にしたドラマの内容と見事にリンクをさせながら、つい見落としてしまいそうな日常の尊さも描かれているように感じる。 MVは時間の経過をテーマにしており、時計の針が進むに従って、メンバーが演奏している部屋が徐々に暗くなっていく。終盤でセットが大胆に動き出すのは、おそらく1日1日が目まぐるしく過ぎていく様子を表現しているのだろう。家の中で何日も大切な人の帰りを待つMVは、ドラマとは違った視点で楽曲の解釈を広げられる。 ■ 弌誠「モエチャッカファイア」 ※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場92位 2001年生まれのシンガーソングライター・弌誠の新曲「モエチャッカファイア」は、アクションRPG「ゼンレスゾーンゼロ」に登場するエレン・ジョーの同人キャラソングとして作れられた楽曲。エレンは現役高校生で、“ヴィクトリア家政”が経営する喫茶店でアルバイトをしている設定だ。ちなみにヴィクトリア家政とは、表向きはメイド喫茶だが裏では特殊な依頼を遂行する家事代行サービスを行っている。特異な集団に所属するエレンは、面倒なことは嫌いで淡白な性格だが、仕事はきっちりこなすプロフェッショナル。「モエチャッカファイア」の歌詞では「ようこそお越しになったご主人様 / 隣に座ってせーの 萌萌萌萌 / こんなんで誰が喜ぶのさ」という、冷めた目線でメイド喫茶の仕事をこなす描写によってドライな彼女の性格を見事に捉えている。 サビの「ソー」は、エレンのギザギザしたノコギリ(Saw)のような歯が由来になっており、細かいディティールまで歌詞に落とし込んでいるのも素晴らしい。弌誠の低音ボイスによって、彼女の低いテンションを表現している点も、原作であるゲームのファンからも支持されている理由だろう。7月23日にMVが公開されてから2週間で100万再生を突破し、歌ってみた動画も増加中。23歳という若さでありながら、巧みな作曲センスを持つ弌誠の活躍に今後も注目したい。 ■ 真貝聡 ライター / インタビュアー。雑誌やWebで執筆するほか、MOROHA「其ノ灯、暮ラシ」、BiSH「SHAPE OF LOVE」、PEDRO「SKYFISH GIRL-THE MOVIE-」といったドキュメンタリー映像作品や、テレビ特番「Mrs. GREEN APPLE ~Review of エデンの園~」にインタビュアーとして参加している。