【行列必至の絶品スイーツ】~ヒットを連発させる舞台裏
「メルティマジック」(5個、3280円)というネット限定のチーズケーキは、食べる前に付属のキャラメルクラッシュを振りかけ、別売りの400円のバーナーで炙る。パティシエ気分が味わえるスイーツだ。 「2分で売り切れが続いています。炙っている時は楽しいですよ」と言うのは、北海道コンフェクトグループ社長・長沼真太郎(37)だ。ヒット商品を連発する長沼だが、パティシエ経験はない。それでもヒットを生み出す独自のやり方を持っている。 「職人になると自分が作りたいものを作ってしまう。それより、みんなが知っている定番のお菓子を少し進化させたり、少し手間をかけて今までにない味にすることを大事にしています」
北海道を代表する名店の2代目~「おいしさの3原則」とは
長沼は過去にも同じ手法で成功を掴んでいた。10年前、東京に「ベイク」という会社を立ち上げ、チーズタルトの店を続々オープン。定番商品に「焼きたて」という付加価値をつけ客を呼び込んでみせた。「ベイク」は70億円を売り上げるまでに急成長。メディア出演も相次ぎ、長沼は時の人となった。 「北海道の田舎から東京で勝負するという感覚だったので、本当に嬉しかったです」(長沼) しかしその成功を6年前、長沼はあっさり手放す。「ベイク」を投資ファンドに売却してしまったのだ。そして戻った先が北海道の「きのとや」。北海道では知らない人のいない洋菓子の人気店だ。
「きのとや」を作ったのは長沼の父、昭夫。長沼は「尊敬する存在であり、目指す存在でもあります」と言う。 昭夫は2014年、カンブリア宮殿に出演。そこでおいしいケーキを作るための3原則を語っていた。 「一つ目は『最高の食材を使う』、二つ目は『作りたて、鮮度が大事』、三つ目は『手間をかける』。『本当においしいものは誰が食べてもおいしい』といつも社員に言っています」
そんなこだわりを分かりやすく体現しているのが「『きのとや』で一番おいしい」(昭夫)と言うショートケーキだ。こだわりはケーキの側面に。よく見るとスポンジが4層に分かれている。作る際に手間はかかるが、こうすることでスポンジの口溶けが良くなると言う。 「手間をかけておいしいケーキを作る。手を抜いたら必ず味は落ちます」(昭夫) 北海道に戻った長沼は、こだわりのお菓子をさらに進化させるべく、尊敬する父親とともに北海道コンフェクトグループを立ち上げた。目指すはお菓子の連合艦隊。「きのとやグループ」を中心に、買収した菓子メーカーなど6社が連携している。 そのコンセプトは、「まだ見ぬおいしいを、北海道から」。これまでにないおいしさを追求している。