加賀まりこ×内田有紀「20代の時に女優を一度休業して、30歳で復帰。まりこさんに再会、気合を入れられ目が覚めた」
プライベートでの親交も深い加賀まりこさんと内田有紀さん。ともに女優として活躍しながらも、この仕事をやめようと思ったこともあると言います。自分の人生を決めるうえで、ふたりが大切にしていることとは(撮影=浅井佳代子 構成=小西恵美子) 【写真】バレトンで体幹を鍛えているという内田さん * * * * * * * ◆女優の道の歩む覚悟を決めた時 加賀 女優をやめようと思ったことは、しょっちゅうある(笑)。日本が高度経済成長期の真っ只中で、みんな上を向いてるのがイヤでね。17歳から20歳までみたいにお金をいただけたから、《普通》に憧れた。 内田 それでフランスに。 加賀 パリに行ったら、生きていくうえで大事なのは、「今夜、誰と食事するか」「今夜、何着ようか」「今夜、誰を口説こうか」だって。そういうフランス人が愛おしかったね。金持ちになりたいタイプは、うんとバカにされていた。で、これが人間の暮らしだと思ったの。 内田 当時の上昇志向の日本と違って。 加賀 アメリカ人やカナダ人と一緒にフランス語の授業を受けたの。発音もすぐできたから覚えるのが楽しかった。まだ日本に入っていないフランスのブランドを紹介するライセンスの勉強をしてたのよ。 パリではイヴ・サンローランさんのお家の近くに住んでいて、遊びに行ったし。許可をもらえれば日本で彼の傘やハンカチを売れると思ってね。 内田 20歳そこそこでそう思えるのがすごいと思います。常に俯瞰で捉えているというか。
加賀 パリの生活を楽しんでいると、浅利慶太さんから電話がかかってきて、日生劇場の舞台『オンディーヌ』に出ないかと。姉に言ったら、「あんたみたいなチンピラにできるような役じゃない」って。その言い方にむかついて、やってダメなら職業を変えられると思った。 で、日本に帰ったの。なんと大当たり。日生劇場、始まって以来の。3歩歩いて4つ勘定したら振り返る(笑)、とか演出家の言うままにってただけで、自分で考えてなかったね。つまり単なる被写体だった。それが、急に女優志願になっちゃった。 内田 何が心を動かしたんですか? 加賀 最後の台詞を私が言うと同時に幕が下りるんだけど、幕が下りるか下りないかで、うわーって喝采がくるのよ。これはやめられない(笑)。そこから私、演技を学ぶの。台詞や発声の練習、パントマイム、ダンスと。で、女優になることを本気で決心した。 内田 意志を感じますね。 加賀 『オンディーヌ』は自分をすり減らす自己犠牲の愛の話だから、私、そうなっちゃって、惚れる相手も間違った。(笑)