JR九州高速船の浸水隠し、前社長ら3人懲戒解雇…JR九州社長らは報酬一部返納「深くおわびする」
JR九州の完全子会社「JR九州高速船」(福岡市)が、博多港―韓国・釜山港を結ぶ旅客船「クイーンビートル」(定員502人)の浸水を隠して3か月以上運航を続けていた問題で、JR九州は26日、責任を明確化するとして、同高速船の前社長ら3人を懲戒解雇とし、JR九州の古宮洋二社長(62)と担当常務が報酬の一部を自主返納すると発表した。 【表】処分などの主な内容
懲戒解雇となったのは、JR九州高速船の前社長、田中渉氏(56)と前運航管理者の柴田康祐氏(61)、前安全統括管理者の小川仁氏(57)の取締役3人。
ガバナンス(企業統治)の機能不全が明らかになったJR九州では、古宮社長が報酬の月額30%(2か月)を、グループ会社を統括する松下琢磨・取締役常務執行役員(57)が月額10%(2か月)を自主返納する。
ほかにも責任が認められる両社の社員を社内規定に基づき処分したとしているが、人数や処分内容は明らかにしなかった。ただ、浸水を検知する警報センサーを上部に移す工作に関与した運航管理者代行については、26日に記者会見した古宮社長は「それにふさわしい処分をした」と説明した。
また、古宮社長は、8月13日以降の運休や、予約がキャンセルとなった客に支払った補償など、この問題でJR九州高速船が負った損害の賠償を、田中氏ら幹部3人に求める訴訟を起こす方針も明らかにした。
古宮社長は会見で、「株主・投資家をはじめ、みなさまに深くおわびするとともに再発防止に努める」と述べた。自主返納額は自ら決めたとし、「妥当」との考えを示したが、株主らの理解を得られるかどうかは「わからない」と語った。 JR九州グループの社会的信用を著しく損なう結果となり、社長を辞職する考えはなかったのかを問われると「自分のことについては、今回発表している分を考えていたのでそれ以上もそれ以下もない」と述べた。
JR九州が設置した第三者委員会の委員長を務め、調査報告書をまとめた尾崎恒康弁護士も会見に同席し、「安全の真の意味の理解が足りていなかった」などと話した。