監督がいないと子供達はどう行動する? 続出する「スポーツ界のハラスメント」と向き合うヒント
2023年の日本を振り返ると、さまざまな“ハラスメント”が明るみになった年と言えるかもしれない。芸能業界、学校関連、そして「スポーツ界」でも昔だったら見過ごされていたかもしれないさまざまな歪みが白日の下にさらされ、多くの人がこのままではいけないと襟を正したのではないだろうか。ではスポーツ界が正しくあるべき姿でいるためにどんなことに気をつけて、どのような仕組みで、どんなやり方を模索したらいいのだろう? (インタビュー・構成=中野吉之伴、写真=AP/アフロ)
ドイツでもどこの国でもハラスメントはある
元女子バレーボール日本代表で、現在日本スポーツ協会スポーツ少年団本部長を務めている益子直美は夏に日独スポーツ少年団同時交流50回記念で訪れたドイツで現地のスポーツユーゲント(少年団)のハラスメント担当の方と話をしたときに気づいたことがあるという。 「日本だとどちらかというと暴力や暴言がまず問題として掲げられていますが、その担当者の方の話だと、ドイツでは性的被害のほうを大きな問題として取り上げていると感じました。問題を解決するために指導者やスタッフは誓約書にサインをしないといけないんですけど、その内容が本当に細かくて。警察とも連携して撲滅活動をしていると伺いました。あとは子どもたちが見てもすごくわかりやすいような絵を使った資料や冊子があったり、もし何かあったらどこどこに連絡してくださいというノウハウも整理されていました。こうした取り組みはやはり日本でも参考にしなければいけないですね」 ドイツでもどこの国でも残念ながらハラスメントはある。どれだけ注意をしても、どれだけ働きかけても、何もかもをコントロールすることはできない。それでも問題意識を高めることはできるし、再発防止のためのルールをつくったり、仕組みを変えたりすることはできる。 筆者が以前所属していたドイツのサッカークラブで子どもへの性的被害が問題となり、1人の指導者が訴えられたことがあった。その指導者はすでに他クラブへと移籍した後だったが、すぐに調査が行われ、指導者ライセンスははく奪され、長期謹慎処分となった。クラブではすぐに再発防止のためのガイドラインを作成し、指導者ミーティングでは指導者としてのあるべき姿勢の確認、そして「指導者は原則として一人では行動しないように。とくにロッカールームで指導者一人と子どもという状況になってはならない」というルールの徹底がされた。 そうした瞬発的な対処力もそうだが、原則的に指導者としてクラブや団体で関わる最初の段階で「無犯罪証明書」を提出したり、前述のように誓約書を交わしたりすることで、やっていいこととダメなことの線引きを明確なものとして、可能な限り健全で問題が起こりにくい空気をつくり出す努力を続けている。