センバツ2022 東洋大姫路の春 毎日新聞記者が振り返る 粘り強く、どんな時も /兵庫
第94回選抜高校野球大会に出場した東洋大姫路は、高知との初戦で2―4で惜しくも敗れた。チームを通算19年率いてきた藤田明彦監督(65)と31年にわたり支え続けてきた三牧一雅部長(65)の退任と重なり、選手たちが「甲子園で監督たちと一日でも長く試合をする」を合言葉にしてきた“特別な春”を取材した担当記者が振り返る。【後藤奈緒】 野球部の練習グラウンドで、一番大きく響き渡っているのが藤田監督の声だ。選手たちを厳しく指導する一方、良いプレーが出ると「良かった、今のだよ」と選手の名前を呼んで褒めたたえる。藤田監督がノックバットを握る時は、選手たちも真剣だ。捕りにくいぎりぎりの場所へ放つ打球と監督との会話のやり取りに、選手たちは息を切らしながらも楽しんでいるようだった。「卒業後も生きていく力を身につけてほしい」と願う藤田監督は、捕れない打球でも諦めずに全力でプレーするよう指導してきた。 センバツでの高知戦では、選手たちがこれまでどんな時でも全力で取り組んできた粘り強さが出た。一回表、2死二、三塁のピンチで相手打者の左中間への飛球を賀川新太選手(3年)がダイビングキャッチ。4点を追う八回裏には、先頭打者の小松聡真選手(同)が、三塁手の失策で一塁にヘッドスライディングし出塁。その後、賀川選手が右越えの二塁打で1死二、三塁の好機を作ると、山根昂介選手(同)が右翼線へ適時打を放って2点を返し、最後の粘りを見せた。 勝利には届かなかったが、試合後、2安打2打点と活躍した山根選手は「藤田監督から学んだ諦めない野球ができた」と話し、藤田監督と2人で自主練習に取り組んできた村崎心捕手(同)は「夏も甲子園に出る」と誓った。藤田監督は「選手たちが全力で取り組む姿に感動した。粘り強くここまで連れてきてくれてありがとうと伝えたい」と語った。 今大会は出場メンバーに入れなかった小野洋介選手(2年)は「自分が試合に出て、夏も甲子園に行く」、内田桔平選手(3年)も「春夏甲子園に出場する」と、夏に向けて闘志を燃やす。4月からは、履正社(大阪)の前監督で東洋大姫路OBの岡田龍生さん(60)が監督に就任する。新たな体制で再び甲子園を目指す東洋大姫路の活躍に期待したい。 〔神戸版〕