ディオール、ラガーフェルド、バレンシアガ......華麗なファッション業界を作り上げた天才たちの物語
夢の舞台裏
有名ブランドのストーリーテリングによってすっかり「伝統的なイメージ」となった人物たちのプライベートな側面に触れることは実に興味深い。今や歴史の中で人間性が希薄になり、イメージが固定されてしまっているからだ。悩み、泣きながら、リッツのスイートで、パジャマ姿で歩き回るシャネル。株主たちのデマに屈することなく、彼のパートナーの元に逃げ込むクリストバル・バレンシアガ。妹の失踪に悩まされ、占い師の予測に振り回されるクリスチャン・ディオール。上司のリュシアン・ルロンに向かって叫び、彼を吸血鬼呼ばわりするピエール・バルマン。フィクションが面白いのはまさにそういったシーンである。歴史の本や当時のインタビューには載っていない場面を再現できるからだ。「ドキュメンタリー映像作家はアーカイブ映像をもとに作業し、歴史的な情報源を頼りにする」と、「la mode, comme Azzedine Alaïa, un couturier français(原題)」(アズディン・アライアのドキュメンタリー作品)など、ファッションのドキュメンタリー映画で高い評価を得ているオリヴィエ・ニクラウス監督は説明する。 「フィクションを通じて、自由に、あらゆることを想像し、さらには時代の黙殺された部分に疑問を投げかけることができる。」本作では、クリエイターたちの同性愛が取り上げられる。オートクチュールのスターたちのより人間味溢れる側面を見せることで、舞台裏に興味のある視聴者の共感を呼ぶ。ルカ・マルケッティは、「シリーズ化することで、登場人物の心理的構成に迫り、彼らの内面を探ることができる」と説明する。ジャーナリストのラファエル・バケの著書から誕生したシリーズ「カイザー・カール」は、最もミステリアスなファッションデザイナーのひとりであるカール・ラガーフェルドの秘密に迫る。ピエール・ベルジェとイヴ・サンローランとのライバル関係やジャック・ドゥ・バシェとの恋の行方にも探る。 一方で、ファッションが白衣を着て行う本物の仕事であることも描かれる。バレンシアガやディオールが生地をドレープし、スケッチブックをひたすら埋める......。これらのドラマシリーズは当然、生地や服にもスポットライトを当てる。また、衣装デザイナーに手を貸したメゾンもある。例えば、シャネルは「クリストバル・バレンシアガ」のガブリエル・シャネル役のための衣装の制作に協力した。トッド・A・ケスラーは、「ディオールは、ディオール氏の最初の1947年のコレクションや、1955年のソルボンヌ大学での講演で紹介されたドレスを再現するために、アーカイブと作品へのアクセスを提供することで重要な役割を果たしてくれた」と述べている。これらのドラマシリーズは、世界中の視聴者に向けて配信されるため、ブランド側もPR効果が期待できる。「これはメゾンブランドのイメージアップに関わるものであり、さらに広くはフランスのファッションとパリの世界的な影響力に関わるものである」とオリヴィエ・ニクラウスは分析している。この夢の舞台裏を明かすことで、映画製作者はファッションを現代文化の中心に位置付け、美的な視点だけでなく、社会や政治の視点からも描いている。
text: Sophie Abriat (madame.lefigaro.fr)