2008年にデビューしたスズキ・4代目「ワゴンR」

一年365日。毎日が何かの記念日である。本日は、ハイトワゴンという新たな軽自動車のジャンルを開拓して大ヒットしたスズキの「ワゴンR」の4代目が誕生した日だ。4代目ワゴンRは、居住性や燃費の向上などブラッシュアップを図り、1993年の誕生以来続いていた軽トップの座を堅持した。 TEXT：竹村 純（Jun TAKEMURA）/PHOTO：三栄・新型ワゴンRのすべて ■室内空間の拡大と燃費改良で軽ハイトワゴンの魅力をアップした4代目 スズキ・ワゴンRの詳しい記事を見る 2008（平成20）年9月25日、軽ハイトワゴンのパイオニアで爆発的な人気を獲得していた「ワゴンR」がモデルチェンジし、4代目に移行。2008年に約15年で累計販売300万台を突破し、同年に登場した4代目は、さらに広い室内と優れた燃費性能によって変わらぬ人気を獲得した。 ハイトワゴンブームを巻き起こしたワゴンR 1993年、 画期的なコンセプトの軽自動車「ワゴンR」がデビューした。ワゴンRは、車高を「アルト」より頭ひとつ分（255mm）高くした1680mm、さらにホイールベースをクラス最大の2335mmに設定して、従来の軽自動車になかった圧倒的なサイズ感と室内空間を持つ“ハイトワゴン”という新しい軽自動車のジャンルを開拓した。 右側1ドア、左側2ドアの個性的な左右非対称の3ドアで、サイドシルの高さを低くしてフロアとの段差をなくし、さらにシートの背もたれの角度を立てて自然な姿勢での乗降を可能にし、従来にない実用性の高さを実現。パワートレインは、660cc直3 SOHCエンジンと5速MTおよび3速ATの組み合わせ。1995年にはインタークーラー付ターボモデルも追加された。 ワゴンRは、発売から3年2ヶ月で累計販売台数50万台を記録。2001年には累計150万台を突破して、空前のハイトワゴンブームを巻き起こしたのだ。 さらに全高とホイールベースを拡大した4代目 その後2代目、3代目も軽販売トップの座を独走し、2008年のこの日、4代目がデビューした。4代目はパッケージングの見直し、インテリアの質感アップ、燃費の向上といったブラッシュアップが図られた。 新開発のプラットフォームにより、先代よりも全高を15mm高め、ホイールベースを40mm延長。これにより、リアフロアはほぼフラットになり、特に後席の居住性が向上したのが特徴である。 パワートレインは、660cc直3 SOHCエンジンと同ターボ仕様の2種のエンジンと、CVTおよび4ATの組み合わせで、エンジンとCVTの改良によって燃費は先代よりも向上。またオプションだが、ステアリングの舵角に応じてヘッドライトの向きが変わるコーナリングライトやSRSカーテンエアバッグ、横滑り防止ESPなど安全機能の充実ぶりも注目された。 車両価格は90.8万～146.7万円。4代目ワゴンRも2011年まで軽自動車販売トップの座を堅持。当時の大卒の初任給は、19.9万円（現在は約23万円）程度なので、単純計では現在の価値で105万～170万円に相当する。 ワゴンRからトップの座を奪ったのはN-BOX ワゴンRは、1998年のデビュー以降、2008年まで登録車を含めた全乗用車のなかで販売トップを独走。2009年に、3代目「プリウス」にトップの座は奪われたが、軽自動車としては2011年までトップの座を堅守した。その間、2001年に150万台、2008年に300万台の累計販売台数を達成した。 2012年に軽トップの座を奪ったのは、2011年にホンダからデビューした、さらに背の高いスーパーハイトワゴンの「N-BOX」である。ボクシーなフォルムに便利な両側スライドドアを装備し、何よりも最大の特徴は圧倒的な室内の広さだった。 これを実現できたのは、燃料タンクを運転席の下側に配置するホンダ独自の“センタータンクレイアウト“であり、これにより、大人4人がくつろげるスペース、特に後席は余裕のスペースが確保された。さらに、多彩なシートアレンジと荷室空間によるユーティリティの高さも評価され、爆発的なヒットにつながったのだ。 以降、ワゴンRは「N-BOX」をはじめ、同じくスーパーハイトワゴンのダイハツ「タント」やスズキ「スペーシア」には及ばなくなったが、それでもベスト10圏内に食い込む健闘を続けている。 ・・・・・・・・ 現在、ハイトワゴンとスーパーハイトワゴンが軽乗用車の7割を超えるシェアを誇っている。ワゴンRは、デビュー当時は革命児のような存在だったが、今はそのスタイルがスタンダードになっている。大げさでなく、軽自動車の歴史を変えたクルマなのだ。 毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。