なにわの下町商店街がオリジナルのユニークポスターで活気。SNSやテレビなどで話題に/大阪・文の里
「ポスターで商店街が元気になってきたで」―。大阪市阿倍野区にある店舗数約60店の商店街がいま、テレビなどのメディアで取り上げられ話題となっている。その理由は、ユニークな大阪弁のキャッチコピーや個性あふれる写真などで店を紹介する「ポスター」を各店の店先やアーケードに掲示したところ、ツイッターなどのソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で「おもしろい」と広まったからだという。このポスターの仕掛け人は、大手広告代理店「電通」関西支社のコピーライター。なぜ、下町の商店街と広告代理店のコピーライターがポスターを制作し、このような盛り上がりを生み出すことになったのだろうか? 阿倍野のビリヤード場、名物女ハスラーの娘、店を受け継ぎ新たな一歩
ポスター制作の協力依頼「なにか物語があると感じた」
日本一の高さ300メートルを誇る超高層ビル「あべのハルカス」から南東へ約1.5キロ。大阪市営地下鉄御堂筋線「昭和町駅」と同谷町線「文の里駅」の間にある「文の里商店街」は、約60店舗が並ぶ下町の商店街だ。「全盛期には100店以上あったんですわ」と語るのは、同商店街協同組合理事長の江藤明さん。昨年2月、近くに大型スーパー2店がオープンするなど、売り上げも厳しい状況が続き「なんとかせな」と商店街に活気を取り戻すための模索を繰り返していたという。 そんな中、昨年5月に転機が訪れる。大阪商工会議所と電通がユニークな商店街ポスターを作るため、協力してくれそうな大阪の商店街を探していたところ、同商店街に目がとまった。これを企画した電通関西支社クリエーティブ局のコピーライター、日下慶太さんは「前に通天閣近くの『新世界市場』でユニークなポスターを制作したところ好評で、商工会議所とほかの商店街でもやろうという話しになったんです。それで20くらいの候補があった中から選ばせてもらいました。店舗数がちょうど良かったのと『アベノ』といういま注目の場所から、なにか物語があると感じた」と話す。
最初は「なんやそれ?」の反応、1店1店を説得
江藤理事長は「うれしいお話しで、さっそく定期総会で報告したけど、最初は組合員から『なんやそれ?』という反応もあった。けど1店1店説得させてもうて、皆さんから承認をもうたんですわ」。3か月後に「ポスター展」を開くこととなり、日下さんらは特色を表したポスター作りに知恵をしぼり徹夜で制作を続けた。「自由に作るという形でしたが、制作メンバーには『お店のことを第一に考えろよ』と言ってました」。そして、1店1店の特徴を出したユニークなポスターが完成し、アーケードや店先に飾られた。 漬け物店主人の写真に「ポスター? はよ作ってや。死ぬで」というキャッチコピーをつけ、閉店日を予告したもの。鮮魚店主人が魚拓ならぬ人拓を自らとり、それを載せたもの。子どもがおかしなポーズで撮った写真に「アホにつける薬はありません」とキャッチコピーをつけた薬局店のポスターなど、あまり見慣れないユニークな作品が勢ぞろいした。「ポスター展が始まる2、3日前に初めて見せられたけど、人やったり図柄やったり、ほんまに店主らのテンションがあがってた」と江藤さん。その後、ポスター展と人気投票が昨年末まで行われ、商店街は盛り上がりを見せた。