白洲迅、演出家・吉田鋼太郎は「めちゃくちゃカッコいい」 舞台『ハムレット』に懸けた熱意に「身の引き締まる思い」
現場でもリアルな家族のような関係に
同年、白洲さんは映画『向田理髪店』(森岡利行監督)に出演。この作品は、寂れた元炭鉱町で理髪店を営む親子を中心に、過疎化や少子高齢化などの問題を抱えながらも懸命に生きていこうとする姿を描いたもの。 白洲さんは、高橋克実さんと富田靖子さん扮する理髪店を営む向田夫婦の息子・和昌役。東京で働いていたが、突然帰郷し「会社を辞めたから店を継ぐ」と言い出す。和昌は過疎化が進む町の活性化を図るため理髪店にカフェを併設しようとするが、父親に反対されてしまう。 ――『向田理髪店』は親子の情が心に染みるステキな作品でした。 「ありがとうございます。福岡の大牟田市で撮影させてもらったのですが、ああいう作品をやりたいなって思っていたんですよね。ドラマで個性的な役どころが多かったこともありますけど、ああいうホームドラマというか、ヒューマンドラマをやりたいなと思っていたところに『向田理髪店』のお話が来て、すばらしい父ちゃんと母ちゃんができた感じがしました」 ――ご自身が演じた和昌くんについてはどのように? 「東京に出て1年で地元に戻ってきて、オヤジの仕事を継ぎながらカフェを併設させたいって。『俺は町おこしをしたいんだ』みたいなふうに言っているけど、結局は仕事でうまくいかなくて、ただ帰ってきただけなんですよ。カフェの併設は本当に思いついてやりたかったのかもしれないですけど。 でも、最終的には結局『やっぱり俺はヘアメイクを勉強したい』って言って、また東京に行くことにする。ある意味どうしようもない自由な若者だったんですけど(笑)。 結局そんなどうしようもない息子でも、克実さん演じるオヤジは『俺みたいな負け犬になるなよ』っていう、あのシーンはすごく印象的でした。 自分の息子が定職についてなかろうが、いろんなことに手を出していようが、やっぱり子どもというものはすごく大事で、やりたいことを全力で応援してあげたいという、その家族愛みたいなところがいいなあと思いました。 変なうがった目で見出すと、そうやってすぐにそんなヘアメイクに…みたいなふうに見えてしまうかもしれないけど、あの作品はそこじゃなくて、本当に家族愛のお話だったなと思います」 ――劇中、映画の撮影隊が地元に来たときに、白洲さんがヘアメイクをされている仕事ぶりを克実さんが温かい眼差しで見ているシーンがあったので、息子の選択を応援することにしたのも理解できました。 「そうですね。本当に心温まるシーンがたくさん随所に散りばめられている作品だったので、いい現場でしたね」 ――見終わった後、温かい気持ちになる後味がいい作品ですね。 「はい。現場でも本当にリアルに自分の父親と母親との関係性みたいなことが実は起こっていて。役を超えてですけど、本番中じゃないときに自分の役者としての悩みとか、日常生活の悩みとか…いろんな悩み相談に乗ってもらったりしていました。 あと、方言をしゃべらなきゃいけなかったのですが、富田(靖子)さんが福岡出身だったので、そういうところから始まってすごく密にいろいろなお話をするようになりました。 でも、克実さんとはお母さんとしゃべるときとはまた違うみたいな、そんな空気が自然と出来上がっていて。やっぱりオヤジとは、そんなにいろんなことってしゃべらないじゃないですか(笑)。 あえてそういうふうに意図してやっていたのかもしれないですけど、それもおもしろかったですし、一つの役者としての醍醐味かなみたいな感じがしました。演じるとき以外も何か自然とそうなっていく雰囲気が、みんなであらためていいものを作ろうとしているんだなって思える瞬間かなって思いますね」 ――白洲さんはラーメン好きで知られていますが、福岡では行く時間はありました? 「ありました。地元の方にいろいろ教えてもらって、ラーメンしか食べてなかったです(笑)。大牟田には『大牟田ラーメン』という独自のラーメンがあって、何店舗か行かせてもらいました。 九州系って博多とかは細麺がメインのイメージですけど、大牟田の麺はちょっと太めなんです。スープも真っ白じゃなくて、ちょっと茶色がかっている感じで、博多で食べるとんこつとはまた違う感じで、すごく楽しませていただきました」