iDeCoで損する「3つのケース」とは?大企業の社員は要注意!
年金制度であり、老後の資金を積み立てながら税負担が減るという「お得さ」に注目が集まっているiDeCo(個人型確定拠出年金)。しかし、実は誰でもそのお得さを享受できるというわけではありません。iDeCoに加入することで損をしてしまう可能性がある「3つのケース」を解説します。(社会保険労務士 井戸美枝) 【この記事の画像を見る】 ● お得さで注目のiDeCoだが、 加入しなくてもよいケースが3つある 政府の新しい資本主義実現会議は6月7日に実行計画2024年改訂版の原案をまとめ、その中でiDeCo(個人型確定拠出年金)について、掛け金の上限引き上げなどの改革について明記しました。この他にも、厚生労働省が厚労相の諮問機関である社会保障審議会の企業年金・個人年金部会で、iDeCoの加入期間を5年間延長し、最長70歳まで加入可能にする議論を進めています。 iDeCoは、いわば国民年金や厚生年金に上乗せする「個人年金」。老後の資金を積み立てながら税負担が減るという「お得」な制度です。 積み立てたお金は60歳まで引き出すことができませんが、自分で運用することができ、その運用益は非課税。毎月の掛け金は全額所得控除され、受取時には控除の対象となるからです。 近年、この制度の「お得さ」に注目が集まっており、iDeCoへの加入を検討した方も多いことでしょう。しかし、実はiDeCoに加入しなくてもよいケースが3つあります。iDeCoに加入することで損をしてしまう可能性がある人もいるのです。次ページ以降で具体的に解説していきます。
● JTCなど「大企業で働く会社員」は iDeCoに加入しなくてもいい 1つ目のケースは、一つの会社に長く働いている会社員で、退職金としての「企業年金」が多めにある人です。伝統的な日本企業(Japanese Traditional Company=JTC)に代表される大企業勤めの人がまさしくこのタイプです。 日本の年金制度(以下の図参照)のうち、大企業に勤めている人には「厚生年金」「企業年金」「企業型DC」などの制度に加入している場合があります。 こうした人は、すでに十分な年金額が見込まれます。 年金や退職金は、控除の枠を超えると、税や社会保険料の負担が生じます。従って、すでに控除枠を超えるような年金額を受け取ることができる見込みであれば、iDeCoでの積み立ては優先順位を下げてもいいのではないか、というのが筆者の考えです。 詳しくは3ページで試算と共に解説します。該当する人はぜひ読み進めてみてください。 ● 50代後半で 「5年以内にリタイア」する可能性のある人 2つ目のケースは、50代後半で、5年以内に仕事をリタイアする可能性のある人です。 というのも、iDeCoで積み立てたお金を受け取る際は、「通算加入者等期間」といって、10年以上の加入期間が必要となります。 しかし、iDeCoの受給を開始できる年齢は60歳から(以下の図参照)。そのため、50歳後半で5年以内にリタイアする予定のある人は、掛け金を拠出せずに運用のみを行う期間が発生する可能性があります。 注意したいのは、運用している間も、iDeCoの「口座管理料」(以下の図)は発生するということ。年間の収益が少なかった場合、口座管理料で利益が相殺されてしまったり、あるいは損失が出てしまったりする可能性もあります。 ちなみに、この「通算加入者等期間」には、企業型DC(企業型確定拠出年金)の加入期間も含まれます。企業型DCを採用している企業に勤めている会社員であれば加入期間の条件を満たし、原則60歳から引き出せるケースが多くなるでしょう。