「静岡市VS浜松市」の対立・分断が顕著に…実は「リニア問題への関心は低かった」静岡県知事選を振り返る
「静岡市と浜松市の対立構図」をまとめる必要が…
リニアが県知事選の争点ではないとすると、ほかに知事選の争点は何だったのでしょうか? 浜松に計画されているドーム球場の是非なども争点のひとつとして浮上しましたが、なによりも今回の県知事選は県都・静岡市出身の大村氏と、静岡市より人口が多く産業も集積している浜松市長経験者の鈴木氏という、いわば静岡市(中部)VS浜松市(西部)という対立構図が争点でした。 そうした対立構図は各地域の得票にも明確に表れています。県西部は鈴木氏を、県中部は大村氏を支持する傾向が鮮明に出ていました。知事選で分断されてしまった静岡県をひとつにまとめること、それが鈴木新知事の最初に取り組まなければならない仕事になりました。
蚊帳の外に置かれていた東部・伊豆エリア
そして中部と西部の争いという今回の選挙で、蚊帳の外に置かれていたのが東部・伊豆エリアです。鈴木・大村両陣営は東部・伊豆の票を取り込むべく、熱心に足を運んで支持を訴えました。 鈴木氏は沼津を地盤とする立憲民主党の渡辺周衆議院議員を、大村氏は三島市を地盤にしている自由民主党の細野豪志衆議院議員を伴って遊説するなど、両候補からも配慮が窺えました。 鈴木新知事は東部・伊豆の振興策として専任の副知事を置くとしています。副知事人事は議会の承認が必要になるため、それまでは担当戦略監を新設して対応するとの見通しを示しました。 鈴木・大村両候補が重要視した東部・伊豆振興策もさることながら、川勝県政が残した課題のひとつに静岡市・浜松市の2つの政令指定都市の人口減少対策・地域活性化があります。
「政令指定都市の失敗作」と言い放った川勝前知事
人口減少は全国的な傾向で、特に静岡県だけが抱えている問題ではありません。しかし、静岡市は政令指定都市でありながら人口が70万人を割るという、凋落傾向が鮮明になっています。 人口減少対策・地域活性化は主に市長の仕事になりますが、知事もノータッチを決め込むわけにはいきません。というのも、川勝前知事は静岡市を「政令指定都市の失敗作」と言い放ち、田辺信宏市長(当時)とは険悪な状態が続いていたからです。 2023年に静岡市長は難波喬司氏になり、静岡県と静岡市の関係修復が進むと思われましたが、それから1年で川勝前知事が辞任してしまいました。 静岡県と静岡市の両トップが、仲睦まじくする必要はありません。知事と市長は、ほどよい緊張感を保って切磋琢磨する方が好ましい関係です。しかし、災害時や産業誘致などでは一致団結できる体制が求められます。川勝・田辺体制下では互いを敵対視して口もきかないような状態でした。県民・市民にとってマイナスでしかありません。実際、2022年に静岡市で発生した水害では、知事と市長の足並みが揃わず復旧に時間を要しました。