『犯罪都市 PUNISHMENT』でマ・ドンソクと対決!正義と悪をよどみなく演じ分ける名優キム・ムヨル
世界のトップスターと肩を並べた“マブリー”ことマ・ドンソク。そんな彼が主演を務めるシリーズ第4弾『犯罪都市 PUNISHMENT』が公開された。本作はどんな凶悪犯にもひるむことなく拳一つで打ち倒す最強怪物刑事の活躍を描くクライムアクション。主人公の刑事マ・ソクトを演じるマ・ドンソクの痛快な暴れっぷりもさることながら、彼の熱い正義を奮い立たせる悪役も見もので、毎回、注目を集めてきた。 【写真を見る】『悪人伝』ではヤクザの組長演じるマ・ドンソクと手を組む問題児の刑事に扮したキム・ムヨル 1作目の『犯罪都市』(17)は所轄を荒らすチャイニーズ・マフィアとの戦いで、悪役を演じたのはユン・ゲサン。2作目『犯罪都市 THE ROUNDUP』(22)では、近年、人気急上昇のソン・ソックが10㎏も増量して連続凶悪犯を怪演した。3作目『犯罪都市 NO WAY OUT』(23)では、マ・ソクトが汚職刑事と日本のヤクザを一掃。青木崇高が日本刀を片手に大立ち回りを見せた。そして、シリーズ4作目の今作は前作から3年後の2018年を舞台に、デリバリーアプリを使った麻薬密売事件の捜査を進めるなかで、マ刑事ら捜査班は国際IT犯罪組織の存在を突き止める。やがてその組織と違法オンラインカジノ市場を掌握した元傭兵のを殲滅すべく、死闘を繰り広げていく。この元傭兵を演じているのがキム・ムヨルだ。 ■マ・ドンソクの相棒から凶敵に!大ヒットシリーズのヴィランに抜擢 マ・ドンソクの大ヒット作『悪人伝』(19)では連続凶悪犯に立ち向かうため、ヤクザの組長役のドンソクと手を組むことになる熱血刑事役を演じたが、今作では真逆のキャラクターでぶつかり合う。マ・ドンソクは「キム・ムヨルは運動能力に優れており、アクションシーンの撮影も簡単にこなしていた。『犯罪都市 PUNISHMENT』のシナリオ作業中、ペク・チャンギ役はシリーズ史上最も強い悪役のため、彼のことが思い浮かんだ」とオファーをした経緯を明かしている。 キム・ムヨル演じるペク・チャンギは残虐行為で職務を解かれた特殊部隊出身の元傭兵という設定。序盤から登場するや、必死の思いで組織から逃げ出した青年を情け容赦なく殺害し、冷酷非道ぶりを印象付ける。喜怒哀楽の表情は全く見せず、組織のオーナーであり、ITの天才チャン・ドンチョル(演じるのは、『エクストリーム・ジョブ』のイ・ドンフィ)との会話もほとんど皆無なため、何を考えているかもわからないという不気味な男。しかも短刀を武器に、相手が誰であろうと躊躇なくサクサクっと刺し殺し、悪行を重ねる。 そんなチャンギにマ刑事の怒りも爆発!「これまで手加減して殴って来た。だがお前は例外だ」と鉄拳アクションが炸裂する。拳VS短刀、果たして、我らがマブリーは今作ではどうやって悪党を叩きのめすのか⁉ 思わず興奮! 拳を握ってヒートアップせずにはいられなくなる。 ■ミュージカル俳優としてスタートし、ドラマ、映画で着実に培った演技力で千の顔を持つ男に キム・ムヨルは1982年生まれで現在42歳。子供の頃から俳優になるのが夢だった彼は、ミュージカル俳優として02年に芸能活動をスタートし、2009年に「愛のめざめ」で韓国ミュージカル大賞主演男優賞に輝くなどミュージカル界のトップスターとして人気を獲得した。一方で、ドラマ、映画でも活躍を始める。日本でも人気を得た時代劇「イルジメ~一枝梅~」(08)でイ・ジュンギ演じる主人公と敵対する悪役に扮し、ラブサスペンス「リミット」(15)では失踪した婚約者を追う銀行員という役どころで主演を務めた。同作では元特殊部隊出身という設定で、愛する婚約者を捜し求め、謎の組織に立ち向かうという一途な主人公を熱演して女性ファンの心をつかんだ。 また公開当時、韓国国民の6人に1人が見たという大ヒット映画『神弓-KAMIYUMI-』(11)や、『代立軍 ウォリアーズ・オブ・ドーン』(17)などではメインキャラクターに抜擢され、存在感を残している。また演技派俳優カン・ハヌルとのダブル主演した『記憶の夜』(17)では、サイコスリラーに挑戦。誘拐され生還した兄は、以前とはどこか違っていた。そんな兄の違和感をムヨルは絶妙に演じた。謎多き物語で、観るものを思いも寄らない結末へと引きこむと高い評価を得た作品だ。 そしてマ・ドンソクと共演の『悪人伝』(19)を経て、『正直政治家 チュ・サンスク』(20)では初のコメディ演技に挑戦。嘘っぱちだらけの国会議員が一夜に嘘をつけなくなったことから起きるドタバタコメディ。『良くも、悪くも、だって母親』のラ・ミラン演じる女性議員のため、滅私奉公する秘書役を熱演。頑張れば頑張るほど、どこかおかしくてつい笑ってしまう。2人の相性も抜群で、続編の『正直な候補2(原題)』(22)も作られている。 ■社会派ドラマ「未成年裁判」の温情派判事でグローバル人気もゲット ドラマや映画で着実に演技の幅を広げてきたキム・ムヨル。近年の活躍で特に注目されたのは、Netflixオリジナルシリーズ「未成年裁判」(22)だろう。ある地方裁判所の少年部を舞台に少年犯罪と向き合う人々の姿を描く法廷劇。キム・ムヨルが演じたのは罪を犯した少年でも更生のチャンスはあると信じて情をかけ、罪を償った少年には寄り添うような温厚な判事チャ・テジュ。そんな彼が、未成年であっても法の下で厳然と裁こうとする女性判事シム・ウンソクに反発しながらも、共に事件に向き合っていく。ウンソク役を演じるのはドラマ「シグナル」(16)や、今夏公開された話題作「密輸 1970」(23)などのキム・ヘス。圧の強いキャラクターが得意だが、本作ではニコリともしない冷徹な女性。一方、ムヨル演じるテジュは柔和な表情で緊張みなぎる場でもふわっと和ませるという役どころを担い、ドラマに絶妙な緩急をプラスしている。その後も、SFドラマ「グリッド」(22)、ミステリー『車輪』(22)、そしてソンガン主演の大ヒット作「Sweet Home -俺と世界の絶望-」のシーズン2(23)に出演するなど、もはや話題作には欠かせない俳優の1人になっている。 さらに7月31日からディズニープラスで配信されているドラマ「NO WAY OUT:ザ・ルーレット」にも出演。ムヨルが演じるのは、金のためなら依頼人を見捨てることもできる卑劣な弁護士。凶悪犯の法廷代理人に自らなるのだが、そこにはある政治家との裏取引があり、さらには凶悪犯に要らん知恵を付けたり、まるで信用ならないゲスっぽさが漂う。そしてこの作品の面白さはキャストが演技派揃い。凶悪犯を演じているのが、「梨泰院クラス」(20)で長家の会長を演じたユ・ジェミョンで、本作では下劣な極悪人にハマっている。そのほか、悪徳女性市長役には「密輸 1970」のヨム・ジョンア。そして、のっぴきならない状況で凶悪犯を守らなくてはならなくなった刑事役で主演のチョ・ジヌンなど錚々たる顔ぶれだ。そんな彼らが己の保身と欲望のために必死になる人間たちに扮して演技合戦を繰り広げる。そんななかで、ムヨルがどんな演技を見せるのか。凄まじい内容だが、機会があればぜひ! さらにこれから公開されるキム・ムヨル出演作『対外比』も紹介しよう。再開発が迫る1992年の釜山を舞台に、国家を揺るがす権力闘争を描く政治サスペンス。『悪人伝』で組んだイ・ウォンテがメガホンを取っており、こちらも男たちの息詰まる闘いがスリリングに描かれる。キム・ムヨルが演じるのは血気盛んで頭も切れて行動も早いヤクザのピルド。彼が手を組むことになる政治家ヘウンを『工作 黒金星と呼ばれた男』(18)のチョ・ジヌン。ちなみに前述した『NO WAY OUT~』の主演だ。そして、黒幕スンテ役に『ソウルの春』(23)などのイ・ソンミン。実力派俳優たちと堂々互角に渡り合い、天下を獲るためにしのぎを削る男たちの闘いをリアルに演じてみせるキム・ムヨル。作品を観るたびに成長を見せている彼が、今後、どんな魅力を伸ばし、さらなる高みに昇っていくのか。楽しみで仕方がない。 文/前田かおり