57人の3年生全員がベンチ入り 高田商と奈良大付が特別な試合
第106回全国高校野球選手権奈良大会(奈良県高校野球連盟、朝日新聞社主催)が7月7日に開幕する。各チームが夏に向けて準備に追われる中、奈良県橿原市の佐藤薬品スタジアム(7月1日に「さとやくスタジアム」に名称変更)で6月20日、高田商と奈良大付の3年生による記念試合があった。高田商28人、奈良大付29人の3年生全員がベンチ入りし、特別な試合を楽しんだ。 【写真】高田商の選手たち。守備が終わると、ベンチにいる全員でグラウンドの選手たちを出迎えた=2024年6月20日午後7時53分、奈良県橿原市の佐藤薬品スタジアム、佐藤道隆撮影 部員数の多い両校は10年ほど前から、3年生のための記念試合を続けている。確実に夏のメンバーに入る選手は応援に徹し、これが最後の試合になるかもしれない選手に声援を送る。奈良大会の公式戦の舞台となる佐藤薬品スタジアムで、公式戦さながらに電光掲示板に選手や審判の名前も入る。 今年は6月18日に予定していたが雨でグラウンドの状態が悪く、試合は2日間、延期された。別のチームが練習のために予約していたが、「記念試合のためなら」と譲ってくれた。 午後6時にプレーボール。持参したスピーカーで選手の名前が読み上げられ、ベンチとスタンドから大声援が飛び交った。 高田商は九回裏、左翼線への二塁打で出塁した永井貴誠が、安田卓真の三塁打で生還。永井はチームメートに頭をなでられながら、照れくさそうにベンチに戻っていった。ここぞという場面での長打に永井は「応援に背中を押されて、バットを振った。ベンチに入れるか分からないが、最後までやりきりたい」と話した。 試合は14―2で奈良大付が勝利した。奈良大付の西倖輝は八回表、代打で打席に。腰のケガでプレーができず1年の秋から学生コーチとしてチームを支え、この夏の大会では記録員を務める。三振に倒れたが、西は「やめようと思ったこともあったけど、好きな野球と関わっていくため、スコアラーをやらせてもらうことにした。相手校の分析でチームに貢献したい」と意気込んだ。 試合が終わると両校の選手はマウンドに駆け寄り、肩をたたいたり、握手を交わしたりして互いの健闘をたたえた。その後、記念撮影し、それぞれの夏への決意を新たにした。(佐藤道隆)
朝日新聞社