【ビートルズとの共通点】KinKi Kidsがジャニー喜多川の寵愛を受けられた「最大の理由」
「ビートルズを作った男」の伝説
ある女子アイドルを取材した時のことだ。同席したマネージャー氏が妙にイケメンである。聞けば、ジャニーズジュニア出身だという。 【写真】『SnowMan』岩本照「未成年女子とラブホで飲酒」 話が弾んだ。 意外なことを聞いたのだ。 「ジャニーさんは、めちゃめちゃブライアン・エプスタインをリスペクトしていましたよ」 えっ! と思った。 ブライアン・エプスタイン――そう、あのビートルズのマネージャーである。 ジャニー喜多川は、ブライアン・エプスタインの影響を受け、自伝を読むなど研究して、マネージャーとしてのその魅力を熱く語っていたというのだ。 ブライアン・エプスタインには、詳細な伝記がある。 その名も、『ビートルズをつくった男』(新潮文庫)。680ページもある分厚い同書を読んだ時のショックは忘れられない。 こんな男がビートルズをつくったのか! ブライアンはイギリス・リバプールの家具屋の息子だった。家業を継ぎ、店でレコードを売るようになる。 ある日、客に「ビートルズのレコードはありますか?」と尋ねられた。ビートルズ? 街はずれのライブハウス(キャバーン・クラブ)へ見に行った。そこで彼らの演奏に触れ、ピンときて、マネージャーになることを申し出る。 当時のビートルズはインディーズバンドだ。リーゼントで皮ジャンを着て、酒を吞みながらシャウトする不良グループである。 リバプールはロンドンからはるかに遠い英国の対岸にある港街だ。そこからブライアンは首都へと飛んで、レコード会社を何社も廻り、猛烈な売り込みをかける。 そうして、やっとメジャーデビュー。遂には20世紀の音楽や文化を一大変革する、世界的なロックグループになったのだ。 それにしても、何がブライアンをそうさせたのか? 先の伝記本や、様々なビートルズ関連書を読むと、思わぬ事実が明らかになる。 ブライアン・エプスタインは、同性愛者だった。徴兵されて陸軍に入ったが、それが理由で軍隊をクビになってもいる。 ビートルズのライブを見て、なんとブライアンはジョン・レノンにひと目惚れしたというのだ!? ◆「幻のメンバー」の正体 なるほど、秘めたる愛の情熱こそが田舎街の不良グループをマネージメントし、一大メジャーバンドへと変革させるパワーの源だったのである。 ブライアンはジョンに性的欲望を持っていた。後に2人は4日間のスペイン旅行を共にしている。その時、性的関係を持ったと噂された。 ジョン・レノンは否定しているが、ある程度の関係を持ったとする説も根強い。近年、オノ・ヨーコはジョンはバイセクシャルであり、男性に性的興味を持っていたと告白している。 ジャニー喜多川はブライアン・エプスタインをリスペクトしていた。これは重要なことだ。 ブライアンは港町の不良バンド4人組の皮ジャンを脱がせ、スーツとネクタイを着用するよう強要した。レコード会社に売り込むためだというが、そうだろうか? ジョン・レノンに惚れて、やがて性的関係を求めた(結ばれた?)ともいわれる男のことである。つまりブライアンは、若い男子たちを自分の「好み」に染めようとしたのではないか? そのマネージメント術は、まっすぐにジャニー喜多川のプロデュース術とつながっているように見える。 ブライアンが発見してマネージメントしなければ、きっとビートルズはブレークしなかったはずだ。港街の不良バンドのままで終わっていたことだろう。 それが世界を変革する20世紀最大のアイドルグループとなった。その秘密は、そのコアのところには、実は男の男に対する「愛」の力があったのだ。 ジャニー喜多川も同様である。もちろん性加害は断じて許されない。とはいえ、ビートルズを世界的スターにしたのと同様の力によって、彼は一大ジャニーズ帝国を築き上げたのだろう。 1967年8月、ブライアン・エプスタインは急死した。32歳だ。死因はアスピリンの過剰摂取によるという。 ビートルズの4人はショックを受け、その後、バラバラになってしまった。仲違いした末に、3年後の解散へと至る。 さて、ここでブライアン・エプスタインの愛称をお知らせしておこう。 そう、<5人目のビートルズ>だ。 KinKi Kidsは、実は3人組グループだと私は書いた。なるほど<3人目のKinKi Kids>こそが、ジャニー喜多川なのだ。彼がリスペクトしたビートルズのマネージャーと同様に。 いや、ジャニー喜多川は<5人目のフォーリーブス>であり、<4人目の少年隊>であり、<8人目の光GENJI>であり、<6人目の嵐>だった。私たちの目には見えない、もう1人の幻のメンバーだったのである。 ◆「ジャニーズ」と「ビートルズ」の共通点 彼らはみんな相応に魅力的な男の子たちだった。しかし、何かが足りない。彼らだけでは、決してアイドルとして輝くことはできない。 100℃の熱湯が蒸気となって飛散するには、気化熱を必要とする。芸能人のブレークも同様だろう。そうしてその気化熱こそが、「愛」の力なのだ。 ブライアン・エプスタインが亡くなって、3年後にビートルズは解散した。 ジャニー喜多川が亡くなって、4年後にジャニーズ事務所は消滅している。 これはあまりにも暗示的だ。 ジャニーズ事務所が崩壊したのは、ジャニー喜多川の性加害がおおやけに告発されたからである。しかし、それだけではない。 ジャニー喜多川が亡くなったその時、ジャニーズ事務所の根幹にあるものが失われたのではないか? 既にして、ジャニーズ事務所は消滅への道を宿命づけられていたようにも見える。 SMAPが、少年隊が、タッキー&翼が、V6が、解散した。 TOKIOはメンバー2人が脱退して、会社を離れる。 活動を休止している嵐も、先頃、自分たちの会社を設立した。 そうして、KinKi Kidsだけが残った。 2人組であるがゆえに、(幻のメンバーから)分量的にもっとも多く「愛」を受け取った。そう、ジャニー喜多川の「魂」を受け継ぐ最後のグループだ。 そのKinKi Kidsも、今、岐路に立たされている。 取材・文:中森明夫
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