書きながら認知症を予防 新しい「自分史」ノート開発
戦中戦後の食生活を記録する作品集刊行
新聞印刷で自分史普及活動に取り組み、現在は自分史出版の関連会社新風書房の代表を務めるのが、福山琢磨さん。30年来自分史講座を指導する福山さんの新しい門下生たちが、合同で作品集を刊行した。「戦中・戦後 暮らしの風景」(発行・新風書房、印刷・新聞印刷)で、近鉄百貨店上本町店の近鉄文化サロン自分史講座で学ぶ受講生6人が労作を持ち寄った。 執筆者は70代と80代。戦時中に学童疎開や空襲を体験するなど、戦中戦後を通じて厳しい暮らしぶりを余儀なくされた世代だ。福山さんからの要請で戦中戦後の食生活に力点を置いて執筆した。 台湾で学童疎開をしていた女性は、ゴボウの香りがするというアザミの根っこを探して炊き込みご飯にして食べた。学友たちとおいしいご飯を心待ちにしていたが、なんの味も香りもしない。アザミの根っこが、ご飯の増量のために利用されただけで悲しかった。
大阪市内で空襲に遭遇し九死に一生を得た男性は戦後、特別配給の名目で配られた米軍軍用食の豪華さが忘れられない。兵士の携帯食で、コンビーフやベーコンの他、食後のデザートであるチョコレートまで付いていた。近所に住む軍隊帰りのおじさんが叫ぶ。 「アメリカの兵隊は戦場でこんないい物を食べていたのか。飢死していった戦友たちに食わせてやりたい。戦友を返せ、責任者は誰や」 胸に秘められた個々人の記憶も、自分史として正確に記録されることで、共有の歴史遺産として受け継がれていく。詳しくは新聞印刷や新風書房の公式サイトで。 (文責・岡村雅之/関西ライター名鑑)