塩野瑛久、俳優業の軸は「受けの芝居」 オーディションで射止めた「光る君へ」一条天皇役
俳優の塩野瑛久(29)は、今年のNHK大河ドラマ「光る君へ」で、オーディションで射止めた一条天皇(懐仁)役を熱演。全国に名を知らしめた。年明け早々には、女優の新川優愛(30)とテレビ東京系ドラマ「五十嵐夫妻は偽装他人」(1月8日スタート、水曜・深夜0時30分)に別居中の夫婦役でダブル主演する。今、勢いに乗る塩野が、大河ドラマの反響や今後の俳優活動について語った。 ほんの2か月前、テレビ朝日の金曜ナイトドラマ「無能の鷹」の会見では、モサモサな髪の毛だったのから一転、塩野は爽やかなヘアスタイルで現れた。 「だいぶ髪を切りました。でも、僕はいろんな役をやっているから、作品を見る人によっては全く印象が違うかもしれないですね」。ただ、優しく笑う表情は全く変わらなかった。 今年は映画「八犬伝」、WOWOW「連続ドラマW ゴールデンカムイ―北海道刺青囚人争奪編―」などさまざまな話題作に出演。中でも、一条天皇を演じた大河ドラマは、視聴者に強い印象を与えた。「大河ドラマのおかげで、今まであまり認知してもらえなかった世代の方に、自分の顔と名前や芝居を見ていただける機会が、すごく増えました」 オーディションで一条天皇という物語の軸となる役を射止めたが、何役のオーディションかを自分の中では理解していなかった。「マネジャーさんはちゃんと伝えてくれていたみたいですが、自分の中では役どころは抜け落ちていて…。何役か知らなかったです。だから、受かった時はびっくりの方が強かったですね。しかも天皇役だし。純粋にびっくりです」と振り返る。 「オーディションに受かった後に一度、制作陣と面談をして、そこで自分は一条天皇役と知りました。そんな大きな役ではないと思っていたら、物語の中心人物で。ここまで長く出させていただけるとは」 プロデューサーからオーディション後に言われた「一緒に組む相手によって、お芝居の仕方を変えていたり、相手のお芝居をよく見ていたり、『受けの芝居』がとにかく良かった」という言葉が、今でも胸に温かく残っているという。 「僕は相手のお芝居を受け止めて、こちらも返していく『受けのお芝居』を、自分の俳優業の軸としていた。だから、褒めていただいた時は、これで良かったと改めて気がつけました」 「受けの芝居」は、塩野自ら編み出した秘技だ。 「いつから意識したとかは覚えていないです。自分で一生懸命、相手の心を動かしにいこうとしちゃう自分に、ある時気づいて。相手の芝居をちゃんと受け取ると、自分に返ってくることを自然と理解してました」 中学卒業後、塩野は父親の体調が悪化したことで、“看板息子”として実家のクレープ店の手伝いをしていた。母親や常連客から、オーディションを勧められたことがきっかけで、2011年にジュノン・スーパーボーイ・コンテストに応募。審査員特別賞などを獲得し芸能界入り。オスカープロモーションに所属した。 「舞台『髑髏(どくろ)城の七人』(11年)をゲキシネで見たのですが、出演されていた小栗旬さん、森山未來さん、早乙女太一さんに心奪われました。それが俳優をやりたいと思ったきっかけでした」 2013年から14年まで放送されたスーパー戦隊シリーズ「獣電戦隊キョウリュウジャー」で立風館ソウジ/キョウリュウグリーン役に抜てき。その後、21年に前事務所を退社し、フリーとなった。「前の事務所をやめてから半年間フリーでしたが、本当にしんどくて。芸能界もやめようと思い悩んでいました」と初めての挫折を味わったが、転機は早く訪れた。 「アクター募集の話をLDHのスタッフさんに聞いてみたら、そのままEXILE HIROさんの耳に届いて。『HiGH&LOW』シリーズにも出演したことがあり、僕の可能性に一番を向けてくれるのはLDHとは思っていましたが、すんなり入れるとは…」 来年には30歳を迎える。20代最後の一年を「充実していたけど、せわしなかった」と振り返りつつ、今年を漢字一文字に「朕(ちん)」を挙げた。「やっぱり大河の比重が大きかったので。でも『帝』ではない。自分のことを『朕』と呼ぶのは、後にも先にもないと思うので、この字にしました」 来年の新ドラマ「五十嵐夫妻は偽装他人」に思いをはせる。「ダブル主演の新川さんとは、3回目の共演。すごくやりやすいです。僕も座長だけど、新川さんが場を盛り上げてくれて。完全に甘えてますね…」 ただ、自分の目標に妥協はない。「来年は自分からつかみにいきたいです。役で言えば教師役。熱血ではなく、少し冷めている教師です。坂元裕二さんの脚本や、今泉力哉監督の作品にも出てみたいです」と具体的にタッグを組んでみたい人の名前を挙げた。30歳を迎える塩野がどのような役をつかみ取るのか注目だ。(ペン・増田 寛) テレ東系1月8日スタート「五十嵐夫妻は偽装他人」 2022年から「U―NEXT Comic」で配信された海石ともえ氏の同名漫画が原作。会沢真尋(新川)が勤めていた会社を辞めて別の会社に転職したところ、別居中の夫・五十嵐直人(塩野)も偶然、同じ会社に転職したことから社内で遭遇。2人は周囲を気まずくさせないよう、他人を装う。離婚するのか、復縁するのか。じれったさに視聴者を“もだもだ”させる新感覚のラブコメディー。 ◆塩野 瑛久(しおの・あきひさ)1995年1月3日、東京都生まれ。29歳。2011年のジュノン・スーパーボーイ・コンテストで審査員特別賞とAOKI賞をダブル受賞。12年フジテレビ系「GTO」でドラマデビュー。14年「純平、考え直せ」で舞台初主演。21年にオスカープロモーションを退社。同年8月にLDH所属に。22年11月に劇団EXILE加入。
報知新聞社