大学入学者の15%は「総合型選抜」 増加の要因は“尖った人材の確保”だけではない? 調査で見えた「メリット」と「課題」
85%以上の大学で行われている総合型選抜の導入が進んでいる背景について、日本大学危機管理学部教授/東京工業大学特任教授の西田亮介氏は「少子化による学生不足が大きな要因だ」と指摘した。 「少子化と18歳人口の減少は大学にとって死活問題で、現在私立大の5割以上が定員割れになっており、この流れは今後も加速していくはずだ。そのため、大学にとって学生の確保は至上命題であり、さまざまな入試を使いながら、伝統的な学力だけではなく『明確な課題意識』『高いモチベーション』などを備えた新しい『優秀な』学生を早期に確保したい。対照的に、課題意識とモチベーションが低い学生は早期に大学を辞めてしまうリスクを孕んでいる」
■総合型選抜の「課題」と「大学に求められること」
文科省の調査によると、総合型選抜の課題としては「評価する観点の設計が難しい」が最も多く、また「選抜に関係する業務時間の負担が大きい」「評価結果の点数化が難しい」なども問題だという。 導入していない国立大学はその理由について「現在の入試選抜方法に特に問題を感じないから」「十分な実施体制を整える人員の確保が難しいから」などを挙げている。 募集倍率において入試の選抜性を失っている大学が入学者確保のために総合型選抜を導入しているケースもあるという。 これに対し、西田氏は「総合型選抜について、大学は2つの方向に分かれている」と指摘。 「多くの大学の本音は入学者数確保が最大の目的であることは間違いない。だが、高倍率の人気の高い国立大学などでも導入している背景には『将来の少子化』への対策と共に、世界から多くの学生が受験しに来る状況がない中で、従来の伝統的な入試の方法では優秀な学生を確保することは難しいという考えがあるようだ。例えば、世界最高レベルの研究力を目指す国際卓越研究大学に選ばれた東北大学も『将来的に総合型選抜に完全移行していきたい』という趣旨の表明をしている」 その上で、大学側の負担については「総合型選抜は受験生の面接試験に対して複数人の教員の稼動が必要となるため教員の負荷はかなり高い」と実情を語った。 少子化が進み、総合型選抜の活用が増える中、大学に求められることは何なのか? 西田氏は「アメリカやイギリスなどでは総合型選抜に近い入学方法が一般化しており、そこでは大学職員の専門性を高めたり、入試のための組織の設置も同時並行で行われているが、日本はこれらの点について遅れている。また、日本の大学はモチベーションが高い学生の確保も重要だが、伝統的な学力も重要であることを重要だ。従来であれば高校で学んだような知識に関しても大学で改めて学習する機会を増やしていくことなども必要になってくるのではないか」と述べた。 (『ABEMAヒルズ』より)