新型ホンダN-BOX JOYの全貌判明 ライバルに対するホンダからの回答とは
「ふらっとテラス」の意味
コア・ユーザーとして仮定するペルソナは社会人3年目の20代の若者で、自然体でありのままでいたい、自宅でも外でものんびりリラックスしたい、いましかない時間を大切にしたい、という価値観を持っている人達。クルマに対する価値観は、運転に不安があるので安心第一、日常生活を効率的に過ごしたい、だそうである。 ターゲットにはこのコア・ユーザーのほか、ふたりの生活を楽しむプレファミリー、子離れ、ペットありの50~60代夫婦も含まれている。共通しているのは、子どもがいない、ということで、N-BOXはもともと子育て世代向けのミニ・ミニバンだから、第3の派生モデルの企画書には、それとは別の層を狙う。と書いておいたほうが通りやすかった……のかもしれない。 ホンダの説明によると、そんなわけでN-BOX JOYでは「♪もっと気楽に」というコピーが前面に押し出され、「ENJOY my Pace BOX」というグランドコンセプトのもと、みんなが気楽に使える。どこでものんびり過ごせる。ゆったり時間(トキ)を味わえる。という3つをテーマに具体化が検討された。 外観では、泥やキズが気にならないアースカラーの「デザートベージュ」がテーマカラーに選ばれ、鉄っちんのホイールでシンプルさを、ドア下部に樹脂製のガーニッシュを装着してタフさを表現している。通常ならメッキとなるドア・ハンドル等を黒く塗りつぶしたことが微妙なしっとり感を生んでもいる。 内装では、Nシリーズ初の撥水表皮を用いたチェック柄が最大の特徴で、性別、年齢問わずのベージュをベースとするこのチェックの内装を手がけた女性の開発者3人との懇親の際、「アムラー世代ですか?」と、質問したら、アムラー世代ではないけれど、安室奈美恵は好きです。と、一人が答えた。安室奈美恵は1977年生まれの団塊ジュニア。芸能から引退した安室ちゃんより若い世代の女性たちが日本の自動車メーカーでも活躍し始め、新しい景色を生み出し始めているのは、まことに慶賀である。 どこでものんびり過ごせるように、N-BOX JOYでは後席を倒すと、前席の背もたれにもたれるようにして車内で寛ぐことができるような仕掛けが施してある。後席の背後と荷室のフロアにもチェック柄の撥水性表皮が用いられており、これが普通小型車のラゲッジ・ルームでも見られないような、ちょっとオシャレな空間をつくっている。 後席の背もたれを前に倒して生まれる空間は「ふらっとテラス」と名づけられ、このテラスでゆったり脚をまっすぐ伸ばせるように、荷室のフロアの後端を80mm高くしている。後席背もたれには樹脂製のパネルとパッドが組み込まれて、お尻が痛くならない工夫が加えられている。実際に筆者がやってみると、ひとりでボーッとするには洞窟のなかにひとり寂しくいるようで、少々窮屈なようにも感じた。あ。リヤのドアを開けばよかったのだ……ということにあとで気づいた。 N-BOX JOYはN-BOXのほかのモデル同様、660ccの自然吸気とターボがあり、駆動方式にはFFと4WDの設定がある。価格は CUSTOMより若干お求めやすく、ホンダはN-BOXの販売の20%程度を占めると予想している。♪もっと気楽に。生きづらいともいわれる時代だからこそ、時代にあったコンセプトだ、と、筆者は評価する。 ラグジュアリーはモノではなくて、自由に好きな場所で自由に好きな時間を過ごすことにあるのだから。
文・今尾直樹 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)