軍事的意味はない? でも意義がある米海兵隊の沖縄駐留
普天間飛行場及び在沖海兵隊の移設問題は、安倍晋三首相と沖縄・翁長雄志知事が会談しても、一向に両者の対立が解ける様子はありません。翁長知事は、自ら訪米し、直接アメリカにアプローチする意向も示しています。 【写真】「辺野古反対」知事誕生 “潮目”が変わった沖縄の政治 「ありとあらゆる手段を使って、日米同盟、日米安保体制の安定のためにも辺野古基地はつくってはいけないと。そういったことを踏まえ、訪米もその一環となる。色々やっていきたいと思う」 この発言は、辺野古に基地を作れば、日米安保を脅かすぞ、というブラフ(脅迫)にも聞えますが、翁長知事がそこまでして辺野古への移設に反対していても、なぜ政府は、普天間基地の県外移設を否定するのでしょうか。
「政治的に最適」の別の見方
政府が県外移設を否定する理由は、2012年12月に、森元防衛大臣(当時)が「軍事的には沖縄でなくてもよいが、『政治的』に考えると沖縄が最適の地域だ」と述べたことに端的に表われています。 一部メディアは、この発言を、沖縄ならば海兵隊を押しつけることが政治的に可能だという意味と解釈していますが、異なる見方も可能です。ポイントは、在沖海兵隊がどこで作戦行動するための、どのような性格の部隊かという点にあります。 在沖海兵隊の存在意義は、歴史的には変遷していますが、現在では、中国による台湾侵攻に備えるという性格が強くなっています。 1996年に発生した台湾海峡ミサイル危機以後、中国の判断は、軍事行動は適切ではないという認識になっているようですが、今まで3回発生している台湾海峡危機が再び発生し、第4次台湾海峡危機が起きないとは限りません。台湾海峡ミサイル危機が、アメリカの介入により阻止されたことを考えれば、アメリカが介入しなければ、危機は再び起こるとも言えます。 中国が、本格的に台湾侵攻を企てた場合、在沖の海兵隊では、数的にも質的にも不足だとする軍事専門家も、数多く存在します。主力である第3海兵師団の構成部隊は、ローテーション配備される部隊が大半ですし、総兵力でも1万7千に過ぎません。装備も、オスプレイで台湾に移動できる程度では、極めて軽装備となります。空爆や弾道ミサイル攻撃、それに揚陸部隊が機甲戦力を投入して来た場合には、死者を増やす結果にしかならないかもしれません。しかしそれでも、ある意味、それだからこそ、在沖海兵隊を台湾に投入する意義があります。