「目撃なし凶器なしカメラなし」早くから聴取も逮捕免れた容疑者の計画性 兵庫女児襲撃
兵庫県たつの市で平成18年、小学4年の女児=当時(9)=が胸や腹を刃物で刺された殺人未遂事件で、今月7日に逮捕された勝田州彦(くにひこ)容疑者(45)は発生当時から兵庫県警の捜査線に浮上し、任意の事情聴取も受けていた。しかし決め手を欠き、約10年後に別事件で服役した後も膠着(こうちゃく)状態が続いた。14日で逮捕から1週間。捜査の長期化を招いた要因は何だったのか。 【写真】女児が刺殺された現場付近 「犯人に結びつくものがほとんどなかった」。たつの市の事件について捜査関係者は客観証拠の乏しさを指摘する。 発生は18年9月28日午後6時ごろ。既に辺りは薄暗くなっていた。犯人の男は学習塾から出てくる女児を狙い、帰宅途中の路上で犯行に及んだ。 今と違って、防犯カメラはほとんど設置されていなかった。周辺で映像を確認できたのは2台のみ。うち1台にリュックを背負った不審な男が写っていたが、人相が分かるほど鮮明なものではない。「それでも奇跡的」(捜査関係者)というほど物証は少なかった。 事件直前、現場付近で塾帰りの別の女児が男に抱きつかれる事案も起きていたが、刃物で胸や腹を刺す本件とは全く態様が異なる。果たしてわいせつ目的だったのか、動機がはっきりしない点も捜査の見立てを難しくした。 県警は抱きつかれた女児からも話を聞いたが、夕闇だったこともあり、男の特徴をはっきり覚えていなかった。他に目撃証言もなかった。 勝田容疑者は当時、同県加古川市内に居住。小学生女児に対する暴行の前歴などがあったため、早くから捜査対象者としてリストアップされてはいた。だが任意の聴取に関与を否認。それ以上追及すべき事情も浮かんでいなかった。 たつの市事件の翌年、加古川市内で小学2年の女児=当時(7)=が何者かに刃物で腹部などを刺され殺害された。これも「目撃者も凶器も防カメも何もない」(捜査幹部)という難事件で捜査は行き詰まった。 勝田容疑者は同27年、姫路市内で女子中学生を刺す殺人未遂事件を起こし、ここで防犯カメラ映像などをもとに県警に逮捕されるに至る。 後に懲役10年の実刑判決が言い渡された一連の公判では、女児の腹部からの出血に性的興奮を覚えるという、勝田容疑者の特異な性癖が明らかにされた。