トランプ前大統領はなぜ、ボーイング757を愛用しているのか(海外)
ドナルド・トランプ前大統領が主に使用するプライベートジェットはボーイング757-200だ。 【全画像をみる】トランプ前大統領はなぜ、ボーイング757を愛用しているのか このボーイング757は30年以上前の旅客機をプライベートジェット用に改造したものだ。 燃費などの効率が最もいいプライベートジェットというわけではないが、このジェット機は元大統領にとっては完璧な広告塔になっている。 彼を好きか嫌いかは別として、ドナルド・トランプ(Donald Trump)前大統領のプライベートジェットの趣味が素晴らしいことに異論はないだろう。彼の現在、主に使っているのはVIP用に改造されたボーイング(Boeing)757-200だ。 757は比類なき航空機だ。1982年の就航以来、この757は空の上で最も高性能で、多用途で、尊敬を集める航空機のひとつと言えるだろう。 しかし最近、この機体について「ひどい」とか「ぼろぼろだ」などと蔑む記事が書かれており、トランプがこの旅客機をビジネスジェット機として改造したことが疑問視されている。 この記事では、このビジネスジェット機は機内の気圧が快適で、より小さな空港からでも運航できるなど、良い点もいくつか指摘している。ただ、この著者のオーナー(トランプ氏)に対する軽蔑の念が、飛行機に対する不必要なまでの辛辣な評価に滲み出ている。 ビジネス航空業界ではよく言われている言葉がある。それは「プライベートジェットは贅沢品ではない。タイムマシンだ」というものだ。つまりプライベートジェットの意義は、搭乗者の時間を節約して生産性を高めることにある。「時は金なり」で、民間機ではなくプライベートジェットを利用することで節約できる時間は、余分にかかるコスト以上の価値があるのだ。 その観点からすると、ボーイング757型機は世界中を飛び回るビジネス界の大物にとっては、最も費用対効果が高く、効率的なコーポレートジェット機ではないだろう。このジェット機は2023年から2024年にかけて260万ドル相当の燃料を消費している。 プライベートジェット専用のガルフストリーム(Gulfstream)やボンバルディア・グローバル( Bombardier Global )は確かにいい選択肢だ。だがどちらも、このVIP旅客機で目的地に到着するときの圧倒的な存在感とドラマにはかなわない。選挙戦の裏方としてこの旅客機ほど見栄えのする飛行機はないのだ。 トランプ氏のような完璧な自己宣伝家にとって、「トランプ」のロゴで覆われた三層で全長155フィート(約47.2メートル)のこの空飛ぶ広告塔ほど素晴らしいプライベートジェット機はない。 この空飛ぶ広告塔が生み出すマーケティング力とブランド力の価値は、2つのベッドルームとダイニングルームを備えた数十年前の旅客機を運航するためにかかったコストに勝っている。 実際、トランプ氏はドキュメンタリー番組の中で、この飛行機は「トランプ・ブランドの延長線上にある」と語ったとニューヨーク・タイムズ(The New York Times)は2016年に報じている。 「トランプ・フォース・ワン(Trump Force One)」と呼ばれるこのジェット機は、2016年と、2024年の大統領選挙を控えた選挙運動の拠点として定着している。 トランプ氏は2010年、マイクロソフトの共同創業者、ポール・アレン(Paul Allen)から757型機(登録番号N757AF)を購入し、古くなった「ボーイング727」の後継機とした。 この機体は、最初に1991年5月にデンマークの格安航空会社スターリング航空(Sterling Airlines)に納入された。1995年にポール・アレンに引き取られるまでは、現在は存在しないメキシコの航空会社TAESAでも短期間就航していた。 この航空機は製造から30年以上経っているが、古い機体でもメンテナンスが行き届いていれば、安全かつ効果的に運航できることは分かっている。エアフリーツ・ネット(Airfleets.net)によると、1989年生まれのテイラー・スウィフト(Taylor Swift)よりも年上のこの757は、DHL、フェデックス(FedEx)、デルタ航空(Delta Air Lines)などの航空会社や貨物輸送会社で定期運航されている。 なお、トランプ氏のボーイング757は、格納庫で一年近く過ごし、全面改装と新塗装を施した後、2022年後半に運航を再開している。 このVIP機を好んでいるのはトランプ大統領だけではない。そして彼の757型機は最も大きいものではなく、最も豪華な機体でもない。 ラッパーのドレイク(Drake)は、1996年製のボーイング767-200のワイドボディという、さらに大型のVIP旅客機で飛び回っている。 またカタールとサウジアラビアの王室は、プライベートで大型ジェット旅客機のボーイング747を使用している。 757型機は、ボーイングのラインナップの中でも特にマイナーな存在だった。双発のナローボディ機で、よくある小型機の737よりは大きいが、787ドリームライナー(787 Dreamliner)のようなワイドボディ機よりは小さい。 ボーイング757-200は、パリからニューヨークへの長距離フライトでも、大西洋に吹く逆風をものともしない性能を備えている。またナローボディのため、ワイドボディ機をサポートするインフラを持たない小さな空港への45分のフライトでも乗客を快適に運ぶことができる。 しかし、ボーイング757で最も際立っているのは、「航空業界のマッスルカー」だということだ。 ロールス・ロイス(Rolls-Royce)製RB211、またはプラット・アンド・ホイットニー(Pratt & Whitney)製PW2000のターボファンエンジンを2基搭載し、各エンジンの推力は4万ポンドを超える。ボーイング757は、暑い天候や標高の高い空港からの離陸に耐える機体として、近代のライバルの多くを脇に追いやった航空機として、パイロットの間で評判を高めてきた。
Benjamin Zhang