オーロラが語るBring Me The Horizonとの共演秘話、最低な世界で「思いやり」を取り戻すために【サマーソニック現地取材】
もっと愛を、思いやりを、優しさを
―新作の話をしましょう。2022年の前作『The Gods We Can Touch』には「Cure For Me」のようなダンサブルな曲もありましたし、全体的にもサウンドに遊び心があったように思います。対して今作は、軽快さのある「To Be Alright」や「Your Blood」のような曲も入っていて多彩であるとはいえ、よりシリアスでスケール感を有する曲が多くなった印象です。どんなサウンドにしたいと考えて制作に入ったのですか? オーロラ:制作はいつもオープンでありたいと思っているので、特にプランはなかった。だから聴く人はいろんな世界観が混ざり合っているように感じるかもしれない。私は特定のジャンルにこだわらず、面白い! いいな! って思ったものはなんでも取り入れちゃうからね。でも自分なりの一貫性はあるんだ。アルバムを作る毎に音楽のコアに近づいている気もしていて、今作ではまたさらに一歩、コアに近づけたと思う。ほとんど計画を立てないまま制作を進めていって、うまくいくときもあればいかないときもあるけど、でも答えはそこにある。そうでしょ? ―答えを探すためのアルバムでもありますもんね。アルバム・タイトルからして『What Happened To The Heart?』で、“心に何が起きたの?”というクエスチョンの答えを探るべく、あなたはいろんなことを調べてこのアルバムを制作したわけで。 オーロラ:うん。 ―作り終え、そこからの新しい曲をライブで歌うようになった今、明確な答えは見つかりましたか? オーロラ:そうだね。そのハッキリした答えは……「the world is in deep shit」。世界はもうどうしようもない! ―え? オーロラ:あはは。(日本語で)ゴメンナサイ。でも、本当にどうしようもないって思うの。私たち人間はお互いの多様性を尊重することを忘れ、動物や地球に対する敬意も忘れてしまっている。それで互いに殺し合って、人類よりも長い歴史を持った動物を殺したり地球を破壊したりする、そんな生き物になりさがってしまった。みんな肌で感じているはずだよね。何かがおかしいって。若い人たちは日々辛い気持ちを抱え、人生は無意味だと感じて、成功、お金、見た目の美を手にしなきゃというプレッシャーを背負わされて生きている。本当はそんなの必要ないのに。私たちは周りの事や人にきちんと目を向けて共存する術を忘れていった。食事を楽しんだり、音楽やダンスを楽しんだり、愛されるための偽りの自分じゃなくてそのままの自分でいることを楽しんだり……そんなことさえも。何かを取り違えている。だからもう一度ちゃんと考えなきゃいけないと思う。そうしないと、私たちの住むこの惑星は、もう本当にどうしようもなくなっちゃうから。 ―昨年2月の来日公演中のMCで「あなたたちはそのままで完璧です」と言っていたのが心に残っています(今回のサマソニ東京公演でも「Cure For Me」を歌った際にそう言っていた)。また前作『The Gods We Can Touch』のインタビューでは「人間はそもそも不完全なもの。不完全さを私たちはもっと讃えたほうがいい」と話していましたね。それも今話してくれたことと繋がっているように思います。 オーロラ:うん。人間らしさを讃えることで、お互いを思いやることができると私は思う。思いやりの方法を考え直すことで、世界はよくなるとも。私たち人間は、ロジックや権力、成功、お金、そういったものに価値を見出すようになって、その代わりに思いやり、リスペクト、愛、繊細さ、優しさ、包容、寛容といった、スピリチュアルな繋がりを失くしてきた。それって陰陽の関係の崩れた、すごくアンバランスな状態だって思うんだ。バランスを失ったとき、物事はもっと悪い方向に進んでいくでしょ? 今がまさにそうで。だから今回のアルバムにも、もっと愛を、思いやりを、優しさを込めなきゃって思ったんだよね。今の世界はハートを失った状態によって支配されている。だから私はこのクエスチョンを投げかけたんだ。「What Happened To The Heart?」。心に何が起きたの? って。 --- オーロラ来日公演 2025年2月17日(月)東京ガーデンシアター 2025年2月18日(火)Zepp Namba
Junichi Uchimoto