“昌平の控え”から筑波大蹴球部へ、Iリーグ最終節で一度は引退決断も…「このまま終わってしまうのかなと思っていた」4年生DF津村岳杜が感慨のインカレデビュー
[12.18 インカレ決勝ラウンド第3節 九州産業大 1-5 筑波大 ミクスタ] 5-1の大量リードでベスト8入りが決定的となっていた筑波大は後半23分、フューチャーブルーのユニフォームに身を包んだ背番号3がピッチ脇に立つと、スタンドの応援団から一際大きなチャントが巻き起こった。投入されたのは、入学から今季終盤戦までトップチームの出場機会が一度もなかったDF津村岳杜(4年=昌平高)。2か月前に一度は引退も決意していた男が、ようやく日の目を浴びる瞬間が訪れた。 【写真】「イケメン揃い」「遺伝子を感じる」長友佑都の妻・平愛梨さんが家族写真を公開 「全部員が目標としているインカレ出場というものをこの北九州で達成できて、グッとくるものがありました」(津村) 津村は最終学年を迎えた今季、セカンドチームが出場するインディペンデンスリーグ(Iリーグ)1部Dブロックで活動し、トップチームが出場する関東大学リーグ1部の試合にはなかなか絡めず、そのままシーズンを終えようとしていた。10月20日には約500人の大観衆が詰めかけた筑波大学第一サッカー場で、Iリーグ最終節の東京国際⼤戦に出場。本来はそこで蹴球部を離れる予定だったという。 「トップチームでもやれる自信はあったけど、なかなか呼ばれることはなく、今年もチャンスがないのかなと考えて、終わり方としては最後にIリーグで、地域の子どもたちがたくさん来ている中でサッカー人生を終えるのが綺麗な終わり方かなと考え、一度は引退していました」(津村) ところが数日後、小井土正亮監督と同級生でもある戸田伊吹ヘッドコーチから引き留めの声がかかった。伝えられたのは「後悔が少しでもあるなら一緒に戦ってほしい」という言葉。面談をした後には1週間以上にもわたって悩んだが、やはり未練を埋めたい思いは強く、2週間後にトップチームの一員として練習に入った。 実は昌平高時代にもトップチームのレギュラーを奪えず、3年時の全国高校選手権ではベンチ入りしながらも出場なしに終わった津村。奮起の思いでサッカーを続ける決意を下すのは、その時以来のことだったという。 「高校ではベンチの中でも序列が高くなくて、選手権でも一回も試合に出られなかった。ただそれが本当に悔しくて、もともと高校でサッカーを辞めようと思っていたくらいだったけど、こんなんじゃ終われないよねと筑波に入りました。それでも3年半は一度もトップチームのユニフォームを着ることができなくて、このまま終わってしまうのかなと思っていました」(津村) それでもチャンスを掴んだ津村は“現役復帰”後のトレーニングでアピールし、関東大学リーグ1部最終節・駒澤大戦で悲願のトップチームデビュー。「自分が予想していたとおり、意外とやれるなというのはあって、ちょうど2週間休んだことでいい感じに頭もリフレッシュできて、自分が大事にしている“サッカーを楽しむ”姿勢が出てきました」。その結果、最後は「もしかしたらインカレにも出場できるんじゃないかという気持ちもどんどん上がってきた」ほどに自信を掴み、全国メンバー入りを勝ち取った。 インカレは今大会からグループリーグ制が採用されていたが、開幕2試合の東海学園大戦(◯3-0)、大阪体育大戦(△0-0)は出番なし。それでも最終節でついにお呼びがかかった。「5-1で入ったので自分のやるべきタスクは試合を綺麗に終わらせること。相手はサイドにいい選手が何人もいるので、そこをしっかり封じて、ここからは絶対にゼロで締めるぞという形で入りました」。チームを支える覚悟は決まっていた。 その想定どおり、チームは終盤に交代選手が立て続けに入ったこともあり、相手のサイド攻撃を受けに回る展開に。ただ、津村は時には力強く、時にはしたたかな駆け引きで応対し、最終ラインに安定感をもたらした。また左足のキックでも存在感リスクに応じたプレー選択で堅実な配球を続け、試合を締めくくった。 誰もが立てるわけではない全国のピッチで刻んだ第一歩。プレータイムは約30分間だったこともあり、取材依頼の声掛けに「本当に自分(への取材)ですか?」と困惑まじりの笑みを浮かべた津村だったが、待望の全国デビューへの思いを問うと「自分の中では感慨深いし、ここまでサッカーしてきて良かったなと純粋にそう思います」と喜びを語ってくれた。 それでも目線はすでに次を向いていた。準々決勝の相手は今季の関東王座を譲る形となった明治大。ここからは引退をかけて臨む一発勝負の戦いが続く中、津村はもう一段階、深い覚悟を持って臨むつもりだ。 「自分の中では延長戦のような感じだったけど、次は明治。ずっとライバル視しているチームだし、新人戦から何回も当たってきたチーム。しっかりと明治に勝つことで、俺らが今年は日本一を取るんだぞということを全国に示せるチャンスだと思う。自分の中でもチームとしても、もう一回引き締めて優勝目指して頑張っていきたいです」。津村岳杜のサッカー生活はまだ終わらない。
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