企業向けサービス価格、11月は3.0%上昇 人件費の転嫁進む=日銀
Kentaro Sugiyama [東京 25日 ロイター] - 日銀が25日公表した11月の企業向けサービス価格指数は前年比3.0%上昇し、前月から伸びが小幅に加速した。人件費の上昇をサービス価格に転嫁する動きが続いている。指数は109.1で、1995年3月(109.2)以来の高水準となった。前月比は0.4%上昇だった。 前年比プラスは3年9カ月連続。大類別で最も押し上げに寄与した「諸サービス」は前年比4.5%上昇。「機械修理」、「宿泊サービス」、「土木建築サービス」で人件費などの諸コストを価格に転嫁する動きが出ている。宿泊サービスは堅調なインバウンド需要も反映された。 押し上げの寄与度が次に高かったのは「運輸・郵便」で同2.7%上昇。「郵便・信書便」では先月実施された郵便料金の値上げが影響した。「道路貨物輸送」では人件費や燃料コストの上昇分がサービス価格に転嫁された。 情報通信は同1.2%上昇。「ソフトウェア開発」、「情報処理・提供サービス」など情報サービスで人件費などの諸コストを転嫁する動きが見られた。 公表している146品目のうち、前年比で上昇したのは114品目、下落したのは16品目。日銀の担当者は「人件費・労務費の上昇を価格に転嫁する動きの持続性や、宿泊サービスなど力強い伸びを示しているサービスの先行き、海外の景気動向や地政学リスクなども踏まえた国際商品・海運市況の動向を引き続き注視していく」と述べた。 SMBC日興証券のエコノミスト、野田一貴氏は「指数の高い伸びは日銀の利上げプロセスを妨げるものではないが、植田和男日銀総裁は賃上げの動向次第と述べており、積極的に後押しする材料にもならないのではないか」と語った。 10月の前年比は2.9%上昇、前月比は0.8%上昇だった。 <高人件費率サービス、前年比3.2%上昇> 人件費が上昇する局面では消費者物価のサービス指数よりも企業向けサービス価格の方に早く反映される傾向があることから、民間エコノミストの間では注目度が高い。 労働需給と価格の相関関係が高い「高人件費率サービス」の価格指数は前年比3.2%上昇で、伸び率は前月から横ばい。賃金が上昇トレンドにある中で価格転嫁が進んでいる。 企業向けサービス価格指数は不動産や運輸、金融、広告など企業が提供している各種サービス価格の傾向を示すため日銀が公表している指数で、内閣府の国内総生産(GDP)統計を算出するための基礎統計としても利用されている。