上川隆也の『遺留捜査』新シーズン、初回は気合入れすぎ? 空回り感否めず
上川隆也演じるマイペースで風変わりな刑事・糸村聡が活躍する人気ドラマ「遺留捜査」(テレビ朝日系、木曜・午後8時)の第5シーズンが12日スタート、ファンを喜ばせている。初回視聴率は14.7%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)と人気シリーズものの安定感を見せ付けてくれた。昨年の第4シーズンで東京から京都へと舞台を替えた同作、初回は2時間スペシャルという力の入れようだが、果たして期待にこたえてくれるのか。
風変わりながらも愛すべきキャラクターが再び
糸村は京都府警捜査一課特別捜査対策室(通称・特対)に所属する刑事だが、空気を読まない性格で突拍子もない言動を発し、周囲からは変人認定されているほど。しかしただの変わり者ではなく、鋭い鑑識眼と偏執的ともいえるこだわりの持ち主でもあって、事件現場に残された“遺留品”から事件の真相と被害者の最期の思いを明らかにしていく。事件解決のみならず遺族の心情をも救う糸村の、風変わりながらも愛すべきキャラクターがシリーズの根幹を支えている。 特対メンバーには前シーズンの栗山千明、戸田恵子、永井大らが再集結し、さらに今回新しく、梶原善が演じる捜査一課から引き抜かれた新メンバー、岩田信之が加入した。猪突猛進タイプでプライドの高い岩田が、糸村とどうからむか、今シーズンの見どころの一つとなりそうだ。また、第1シーズンからレギュラー出演し、上川との漫才のような軽妙なやりとりで人気を盛り上げてきた甲本雅裕も引き続き出演している。 人気シリーズということで、固定ファンを相手にするには守らなければならない定石ができつつあるのだろうが、新規に見る側としては、いささかユーモア過剰のような印象もある。甲本との掛け合いはシリーズ名物として欠かせないものだが、たとえば糸村とバディを組まされた刑事・神崎莉緒(栗山千明)との捜査中の会話のやり取りなどでは、ともすればユーモアが鼻につきドラマ全体の緊迫感を薄めてしまうような印象を受けた。 また、ロッククライミングをして苦労の末に発見したカラビナがメインの遺留品ではなかったというのも肩透かしを食わされた気になり残念だった。思わせぶりに扱われたカラビナ、もっと事件の深層に関係していると思っていた視聴者は少なくないだろう。エピソードに登場する遺留品は1つにして欲しい。無理やり感満載の雑な脚本に、無理があるのではないか。 初回2時間スペシャルということで、柄本明ら豪華なゲスト出演者を揃えてのスタートとなったが、正直がっかりした。キャストの好演ぶりとは対照的に支離滅裂な脚本が足を引っ張りかねない懸念がある。第2話以降はシリーズのテイストを愛する固定ファンだけ、とならないことを願いたい。 次も観たい度★★☆☆☆ (文:田村豊)