祇園祭・山鉾巡行で凛々しい立ち姿披露する鶏鉾の稚児人形、実は正座ができました…修理完了後に判明
祇園祭の山鉾(やまほこ)巡行で、約160年にわたって鶏鉾に据えられてきた稚児人形が、正座できる構造となっていることが判明した。普段は分解して箱に収めており、巡行時は足に鉄芯を入れて立たせていた。かつては子どもを稚児として乗せており、追手門学院大の浅(あさ)湫(ぬま)毅(たけし)教授(日本彫刻史)は「生き稚児が立ったり座ったりしていた姿を再現したのでは」と話す。(畝河内星麗)
人形(高さ約1・3メートル)は江戸後期の1863年、人形師・山下源光好により制作。巡行時には鶏の飾りが付いたきらびやかな天冠をかぶり、鉾の正面で凜々(りり)しい立ち姿を披露する。
月日がたち、損傷が目立ったため、昨年の祭が終わった後に修理されることに。修理前の調査で、浅湫教授は人形の太ももの付け根や膝に関節があったほか、太ももの裏はえぐられたような形状が見られたため「座ることができるのでは」と推測。公益財団法人「美術院」(京都市下京区)による修理完了後に検証したところ、正座できることが判明した。
この“新事実”により、人形とともに伝わってきた保管用の木箱が、人形を正座させるとぴったりと納まるよう作られていたこともわかった。これまで解体して収めていたときは、余剰スペースがあったという。
27日、鶏鉾の町会所(下京区)で正座姿が披露されると、報道陣らから驚きの声が上がった。保存会の坂本篤史・代表理事(56)は「今回の修復で新たな発見が多くあり、驚いている。珍しい稚児人形の姿を多くの人に見てもらいたい」と話していた。
正座姿の稚児人形は、宵山を控えた7月13日、鶏鉾の町会所で見ることができる(午前10時~午後9時)。
今回は、鉾の屋根下に使われる部材の軒桁と欠損の激しかった金具も初めて修復した。漆の塗り替えのほか、繁栄を象徴する鉄線の花と繊細な唐草の模様をあしらった金具が復元された。