国学院久我山・上田主将 「イチローさんへの恩返しを」 センバツ
第94回選抜高校野球大会(毎日新聞社など主催)第10日の30日、国学院久我山(東京)は大阪桐蔭に敗れたものの、後半は打線が粘り強さを見せた。同校では2021年11月、米大リーグのマリナーズなどで活躍したイチローさんが「臨時コーチ」に就任。上田太陽主将(3年)は仲間とともに、イチローさんが認めてくれた「考える全員野球」を大舞台でも貫いた。 【全試合あります! 球児の熱い戦いを号外で】 ◇イチローさんが「臨時コーチ」に 2年前の秋、東京都内の1年生が参加する大会で初戦敗退し、「久我山の歴史の中で最弱」と呼ばれた世代を引っ張ってきた。大エースはおらず、強力な打線もない。だからこそ、バントを多用するチームバッティングを心がけ、相手に応じてスタイルを変える「考える野球」にこだわった。 21年秋の東京都大会決勝。劇的なサヨナラ逆転勝ちで37年ぶりの頂点に立ったが、上田主将の胸中には複雑な思いがあった。1死満塁の好機で打席が回ってきたが中飛に倒れ、個人としては結果を残せなかったからだ。「みんなにチャンスを作ってもらったのに応えられなかった」と思い悩んだ。 そんな時に同校を訪れたのがイチローさんだった。1学年上の先輩が指導をお願いする手紙を出し実現した。指導初日、思い切って打ち明けた。「打てない時に悩んでしまうんです」。イチローさんは真剣な表情で「それでいいんだよ。考えて苦しんだ上で、結果を出すことでしか前に進めない」と答えた。気持ちが軽くなるのを感じた。 打撃や走塁など2日間にわたる指導を終え、イチローさんは「久我山のスタイルが好き。全員で考える野球は素晴らしい」と話した。自分たちのスタイルが認められたことが、うれしかった。「教わったことを試合で生かしている姿を見せるのが、イチローさんへの恩返し」と、練習への向き合い方も変わった。 今大会では相手を揺さぶりながら少ない好機をものにし、勝ち上がるたびにイチローさんから「おめでとうございます」などのメッセージが、尾崎直輝監督(31)のスマートフォンに届いた。あこがれの人のエールが励みになった。 30日の準決勝。国学院久我山は11点を追う六回、上田主将の犠打などで打線をつないで2点返し、大阪桐蔭の猛打に一矢報いた。 かつて「最弱」と呼ばれた選手たちが、センバツ初勝利からベスト4まで駆け上がった。上田主将は「自分たちの『久我山野球』を貫き通せたのは、イチローさんの言葉があったから。夏に向けても、自分たちの野球を続けていきたい」と語った。【小林遥】 ◇決勝戦もライブ中継 公式サイト「センバツLIVE!」(https://mainichi.jp/koshien/senbatsu/2022)では、決勝もライブ中継します。また、「スポーツナビ」(https://baseball.yahoo.co.jp/hsb_spring/)でも展開します。