新美南吉が描く童話世界を独自タッチで絵本に 滋賀の画家が出版「物語の意味みんなで考えて」
童話作家・新美南吉(1913~43年)の作品「タレノ カゲ」を基にした絵本「だれのかげ」を、滋賀県東近江市の画家・西條由紀夫さん(68)が出版した。街の影を巡って繰り広げられる童話の世界を独自のタッチと色彩で描く。空き家バンクを活用して他県から移住してきた西條さんは「湖国でいろんな創作に挑戦したい」と意気込む。 「ごんぎつね」などで知られる新美の童話を題材に以前、西條さんが制作した絵本「子どものすきな神様」が2017年の新美南吉絵本大賞優秀賞を受賞。翌年、出品作を自費出版した縁でサンライズ出版(滋賀県彦根市)が制作を今回依頼した。 童話は街の広場で子どもの見つけた丸い影についてスズメ、ポスト、街灯、軽気球が自分の影だと次々主張するが、夜になると影はなくなり、太陽がつくっていると分かる物語。昭和初期に片仮名で書かれていたが、西條さんがタイトルを含め、平仮名で執筆。絵は場面に合わせ、木工用接着剤を塗って乾燥させた紙にアクリル絵の具の色を重ねて描き、くぎで線を入れて仕上げた。 B5判24ページ。1650円。福井県で仕事と絵画を両立し、定年退職後に移住した東近江で精力的に創作活動を続ける西條さんは「絵本で影は黒色にせず、広場の一日の様子を表現した。物語に込められた意味や新美南吉の作品をみんなで考えてもらえれば」と話す。