「空き巣より強盗の方がいい」「あのバーさん死んだってよ」 19歳被告が法廷で語った「ルフィ事件」実行犯の鬼畜
暴力を振るうことが楽しい
法廷での中西被告は、長い前髪が目元を完全に覆い隠し、表情をうかがいしることはできない。永田は尋問の終盤、中西被告に対して「私のせいで罪名が重くなり、取り返しのつかないことをしてしまった。私としては被告は、法定刑に値するようなことはしていない」と涙ながらに述べていたが、被告は事件当時、永田に怯えており、従わざるを得ないと思っていた面があったようだ。被告人質問において、当日をこう振り返った。 「あれだけのことをした後、また強盗したいと思える永田の神経にかなり恐怖を感じました。その後永田がキムと通話したあと『あのバーさん死んだってよ』と言っていました。『お前らも暴力振るったよな』と言っていて、暴力を振るうことが楽しいと言う価値観を持ってるんだと思いました。でもここで自分だけ暴力を振るっていないというと、後から何をされるか……だから、暴力を振るったとうそをつきました。実際は殴っていません。 さらにその後永田は〈明日も案件あるらしいから、お前らも来るよな〉と誘ってきた。「はい、としか答えようのない感じで、断ったら何されるかわからないという恐怖があり、来るよな、と言われて加藤臣吾(事件当時25、中西被告の同居人で実行役の1人)が先に『行きます』と言ったので、自分も加担することに決めました」(被告人質問での証言) 指示役が決めた“明日の案件”とは、東京都足立区のBさん宅に宅配業者を装って侵入し強盗をするという“案件”と、別の“案件”ふたつを1日で敢行するというものだった。グループ『木曜日ハシゴできるかな』が立ち上がり、野村が抜けたところに新たなメンバー、高瀬基嗣(逮捕当時32)が参加した。“明日”は20日金曜日となるが、実行犯らは狛江事件を起こした木曜日の夜から動いていた。
『木曜日ハシゴできるかな』
1月19日夜7時。「キム」がテレグラムのグループ『木曜日ハシゴできるかな』を作成し、事件の計画を送信した。概要としては〈B宅に多額の現金がある。宅配業者を装い侵入し強盗する〉というもので狛江事件と同じ手口である。高瀬以外の実行犯らで夜に下見に向かい、インターフォンを押すなどの準備を行った。ところがこの時点でBさんは自宅を離れていた。不在がわかったことで、永田は19日の実行を断念し、明日に切り替えると指示役に報告した。狛江事件もそうだが、彼らは「空き巣」を狙うのではなく、住人が在宅しているか確認し、なるべく在宅時に「強盗」を起こそうと行動していた。明らかに刑罰の重い行為を選ぶ理由は「住人を脅し、金の在処を聞き出し、確実に、そして大きく“稼ぐ”ことを狙うため」だという。 1月20日金曜日の朝、改めて実行犯が集合し、段ボール箱や結束バンドなどを購入し、宅配業者の制服に着替えるなど準備を整えてからBさん宅へ。周辺を走行したのち、インターフォンを3回押したが、応答がないため、一旦車に戻った。指示役キムと永田が“空き巣に切り替えBさん宅に侵入するか、もうひとつの案件に行くか”話し合いをした結果「強盗の方が確実に金が手に入るから、強盗の方がいいよ」とのキムからの提案もあり、もうひとつの案件の下見に向かうことになった。ところがそちらは「ターゲット宅の前に幼稚園があり、人の目があまりにつきすぎる」(永田の証言)などの理由から、決行を断念。空き巣に入る為、Bさん宅に戻った。 午後1時、永田以外の実行役が改めてBさん宅の不在を確認し、バールで窓を割って侵入。室内を物色していた。永田は、今回は「ラクをしたかった」(証人尋問での証言)ため運転手役として、犯行のために乗ってきた車をBさん宅の近くに停めて待機していた。 ところがここで永田が警察からの職務質問を受け、逮捕される。直前に、常時指示役とつながれたテレグラム通話でその旨連絡。同じく常時接続状態のテレグラム通話で指示役から実行犯らに「永田が職務質問を受けている」と連絡が入ったことから実行犯3人はBさん宅を出て逃走した。 永田に職務質問がかかったのはこの日の午後1時30分、竹ノ塚署に「足立区内に不審車両が徘徊している」という情報が寄せられたことによる。警察官が車両を捜索すると、10分後に路上でプリウスを発見。近くにいた永田に職務質問をしたのだった。車内を確認したところリュックがあり、中からフランクミュラー、ブルガリなどの時計が発見された。狛江事件の被害品とシリアルナンバーや色などが一致した。