再エネと水素を組み合わせた「トラフグ養殖」は期待できるか
■水素で電力を蓄えると8割がムダに
そのような、電力を蓄える方法の一つとして提案されているのが水素だ。再生可能エネルギーが余剰のときは、その電力で水を電気分解して水素を作って貯蔵しておき、電力が不足した時には、その水素を使って燃料電池で発電する。 水の電気分解装置も燃料電池もすでに技術はできているから、この技術を組み合わせればできる。 ただ、この方法には問題がある。水を電気分解するときのエネルギー効率は70%くらいしかなく、さらに燃料電池で水素から電力を取り出すときのエネルギー効率はもっと低くて、低温でも作動する固体高分子形の場合30%くらいしかない。 すると全体の効率は20%くらいになってしまう。つまり、余剰電力を水素にして蓄えようとすると、その8割方がムダに捨てられてしまうことになる。 例えば100Whの電力が余剰になったとして、その電力を水素で蓄えることを考えてみる。この場合、100Whの電力を使って水を電気分解して水素を作ると、その水素の持つエネルギーは70Whまで低下してしまう。 そしてその水素を使って燃料電池で発電すると、その発電量は20Whにしかならないという計算になる。水素でエネルギーを蓄えるというのはかなり無駄の多いやり方なのだ。 しかしながら、このエネルギーの無駄を巧妙な方法で極力減らした事例があるので紹介したい。
■壱岐市の「低炭素の島づくり」とは
舞台となるのは長崎県の壱岐島だ。壱岐島は九州から北北東へ約20kmの玄界灘に浮かぶ離島で、面積は113.9km2。人口約2万5,000人。最も高い山でも標高212.8mだから高低差があまりない平地の多い地形である。 壱岐島および周辺の島々を含めて壱岐市の市域となっている。離島といっても山手線の内側の2倍程度の面積を持つ島だ。 壱岐市は第2次総合計画において「低炭素の島づくり」を掲げて、再生可能エネルギーの推進に努めている。九州には離島が多い。 本土と電力系統が連携されていない島では一般にディーゼル発電機で電力が供給されるが、壱岐も同様で、使用される電力のほとんどは島内に2か所あるディーゼル発電機から供給されている。 このような島で低炭素を実現するためには太陽光発電や風力発電のような再生可能エネルギーを導入する必要があるが、本土と連携されていない壱岐では電力の需要と供給の変動が激しく、先に述べたような出力調整が頻繁に行われることになる。 そこで、壱岐市は不安定な再生可能エネルギーを安定して利用するために、東京大学などと連携して「RE水素システム」とよばれる水素による電力の貯蔵を行うことにした。このシステムは2022年夏、すでに完成している。 ※後編では、「RE水素システム」の仕組みなどについて紹介しています。