誘ってもタヌキ寝入りする夫。セックスレス解消に向けて動く妻。長年のブランクを埋めるために必要なこととは?【書評】
セックスレス解消に最も必要なのは、夫婦がいかに本音できちんと対話ができるか、という点にある。 具体的な行動で言えば、自分の本音を感情的にならず相手に伝えること。重ねて相手の本音を、いかに感情的にならずまっすぐ素直に受け止めるか、ということだ。特に難しいのは後者だろう。誰かの話を傾聴することは、想像以上にできている「つもり」になりやすい行動である。 重ねて本著がセックスレス解消の鍵として描いているのは、わかっているけれどできない、「心と身体が別」という状態への理解や寄り添いである。理解していてもできない。あるいは理解していても止められない。セックスに限らず、その感覚に覚えがある人はきっと多いはずだ。そう考えれば、パートナーと性交渉ができなくても、相手を大事に想う気持ちや好きな気持ちがなくなったわけではない。そう冷静に理解できる人もいることだろう。
さらに本著では、セックスレス解消や、それに付随しやすい課題のショートゴールの設定についても、わかりやすく解説が盛り込まれている。性交渉がゼロの段階で、昔は当たり前だったからといって、いきなり完璧な性交渉の成功を目標に置くのは難易度が高い。昔スポーツをしていたり楽器を弾いていたからといって、長年のブランクを経て、以前とは同じようにできないのと同じである。 ぼんやりと言葉だけが先行するセックスレスという課題。やわらかいタッチのマンガによるストーリーや解説コラムで、非常に具体的な行動ステップにばらして解決法を提示してくれる。
今セックスレスに悩んでいない人も、今後いつ悩む側となるかはわからない。あるいは今未婚の人も、いつどんな縁でふいに結婚するか、あるいはそこからセックスレスで悩むかはわからない(筆者の周囲の既婚者も、数年前は「結婚する気はないよ」と笑っていた人間が男女問わず大勢いる)。 そういった意味でも、立場を問わずぜひ1度作品に触れ、セックスレスという問題の引き出しを持ってもみてもいいのではないだろうか。 文=ネゴト/ 曽我美なつめ