<春へのキセキ・智弁学園>/下 「日本一に」慢心なし 開幕見据え日々全力 /奈良
近畿大会を制した後も、智弁学園の選手らは「あくまで日本一への通過点」と気を緩めることなく練習に励んできた。垪和(はが)拓海選手(2年)は「勘違いしてはいけない。向上心を持って自分の課題に取り組むだけ」と背筋を伸ばす。 この冬の課題は、選手一人一人の能力や技術を高めていくことだ。打撃や守備の技術向上、体作りを通じ、各自の課題克服によってチームの底上げを図る。小坂将商監督は「選手らは打撃が好きで得意な一方、走塁や守備には課題がある。何事もおろそかにならないよう、攻めていけと指導している」。 目指すのは、すきのない走塁と完璧な守備だ。ヒットになりそうな難しい打球やギリギリのプレーを、いかに仕留められるか。ノックの際には「取れや!」「そんなんやったらあかんやろ!」と厳しい声も飛び交う。森田空選手(2年)が「この冬は自分との戦いです」と口にする通り、日々の練習でも互いに真剣勝負を繰り広げる。 過酷な練習を耐え抜く選手らの原動力は、「絶対日本一になる」という目標だ。2020年は夏の甲子園が中止となり、引退した3年生は無念の涙をのんだ。センバツ交流試合を共に戦った2年生もおり、「先輩たちの分まで」との思いは例年以上に強い。 小坂監督は夢舞台での展望を「まずは2勝。1回戦、2回戦と勝ち上がることができれば、その後はなんとか食らいつけるし、勢いもつくはず」と語る。 強力打線と左右のダブルエース、高レベルのプレーは智弁学園の武器だ。この秋冬は、そこにチームワークが加わり、何にも代えがたい強みとなった。近畿大会以前は「俺が、俺が」と一人野球をしてしまうことも少なくなかったナイン。聖地でも36人の力を結束させ、近畿王者の実力を見せつけられるか。約1カ月後のセンバツ開幕を見据え、今日も一球一打に全力を注ぐ。【林みづき】