“都民のため”の宣言「議会基本条例」ない都議会 都議選で改革進むのか?
ある都民の家庭で
(これまでのあらすじ) 都内在住、都民夫(みやこ・たみお)さんは妻と高校生の息子・都議一(みやこ・ぎいち)さんの3人家族。議一さんの学費捻出のため、忙しく働き、家庭を顧みる時間がなかった民夫さんだったが、息子が通う都議会高校で、もうすぐ編入生を含む入れ替え試験があると知り、成績がどのようになっているのか、心配に。しかし、議一さんの“成績表”はなく、参考書や問題集を購入した“領収書”もすぐに確認できず。思い切って民夫さんは、全国1、2の大学に入学したお隣の大阪さん、兵庫さんに議一さんのことを相談してみた……。
目標なしで勉強したって、成果は出るの?
「議一が何をしているのか、忙しいのを理由にちゃんと何をしているか見ていなかった私もいけなかったですね」。 民夫さんがうなだれています。 「こういう風に、なんかおかしいと気づいたときがチャンスなんやで。これから、これから」。 大阪さんと兵庫さんは励ましながら、民夫さんに質問しました。 「ところで議一さんは、そもそも都議会高校でどんな風に勉強するか、宣言したんかいな」。 民夫さんは答えます。 「入学するとき、英語をがんばると言っていましたが」。 やれやれ、という感じで大阪さんと兵庫さんは顔を見合わせます。 「高校にいる間に、どんな風に勉強するかを決めへんとか、あかんでしょ。将来、どこの大学に行くのとか、何の仕事をしたいとかも決めへんといて、目標なしで、成績が上がったり、上位の大学に入学できたりしまっか?」。 民夫さん、返す言葉がありません。……(つづく)。
「何を都民のためにするのか」宣言する、議会基本条例のない都議会
地方議会が、自ら議会運営の基本原則を定める「議会基本条例」。地方分権の進展を見据え、議会や地方議員の果たすべき役割を、住民に対して明確にしようと、2006年5月北海道栗山町が全国に先駆けて制定しました。それから11年経ち、早稲田大学マニフェスト研究所の「議会改革度調査2015」では回答があった全国1414地方議会のうち、半数弱にあたる651議会(46%)が同条例を制定しています。 最新の都道府県ランキング1位大阪府議会は2009年、同2位兵庫県議会は2012年に同条例を設けました。どちらも、議会と知事との権能の違いを踏まえた、対等で緊張ある関係の構築「二元代表制」を明確にした文言や、住民参加の推進・住民意見を反映させる取り組みへの努力、議会審議の活性化のほか、監視機能と政策提言機能の充実を盛り込み、既に政策立案や住民対対話との取り組みなどで実績を挙げています。 都議会でも、遅ればせながら、ようやく都議選前の2017年第2回定例会で、東京改革議員団と都議会生活者ネットワークが共同で「東京都議会基本条例」を提案しました。しかし、継続審査となり、制定にはいたっていません。 民夫さんが痛いところを指摘されたように、「どのように運営する」、「どのような姿を都民に示す」という宣言のないままでは、既に住民に向けた議会基本条例を宣言し、体系を整えて改革に取り組んでいる他の議会との差はどんどん開いていく一方です。