【UFC】1年で4試合の王者ペレイラ「試合を重ねることで成長できる」×ラウントリーJr「“ラスボス”に挑戦はとてもクールだ」
◆カリル・ ラウントリー「俺が言いたいのは『これまで通りの俺を期待してくれ』ってこと」
──ラウントリー選手、今回のファイトウィークはいつもと違いがありましたか。 「いろんな意味で特別だったと思うよ。今回は初めてタイトルマッチに向けた準備ができたんだ。トレーニングキャンプでは雰囲気がとても良かったし、みんな笑顔で楽しい時間を過ごしながら準備してた。ポジティブなエネルギーに満ちていたよ」 ──オファーの電話があったときの気持ちは? 「人生で最も大変な1日を過ごしていたんだよ。法的な問題の真っ最中で、電話が鳴ったんだ。『調子はどう?』ってUFC側から聞かれて、俺は『最悪だよ、どうしたんだ?』って答えたんだ。そしたら『これで少しは気分が良くなるといいな。10月5日にソルトレイクシティでアレックスと戦うことが決まったよ』って言われて、その瞬間から一気に1日が変わったんだ。本当に、そこからはずっと笑顔だったよ。着信の相手がUFCだったときは、嫌な予感がして心が締め付けられるような感じだったけど、結果的には最高の連絡だった」 ──以前に、ネット上の人達の発言や批判について言及していたけど、今回の試合発表後にも少し反発があった。それをモチベーションに変えることができましたか。 「ネット上の声は気にしてないよ。他人の意見に割く時間もないんだ。見てくれ、俺は今週末にタイトルマッチをするんだ。ニュースを聞いた瞬間から、それだけに集中している。だから、誰かがそれに腹を立てても、それは俺の問題じゃない。俺のやるべきことは、UFCから求められたことを実行すること。みんな意見を持っているだろうし、この試合が終わった後にも好き勝手に言うだろう。でも、それを気にしてる暇はないんだ」 ──2021年9月から5連勝で4KO・TKO。とくに直近の2試合ではクリス・ドーカス、アンソニー・スミスをTKOに下しています。タイトルマッチを掴むまでの道のりは想像通りでしたか。 「こんな風に実現するとは思ってなかったよ。本当に色々と驚くような展開だった。でも、タイトルマッチを控えている今、自分がいるこのポジションには満足している。タイトルマッチのオファーをもらえたことが嬉しいし、準備もできているって実感してるんだ。これはただのラッキーじゃなくて、強引に試合が組まれたわけでもない。俺はずっと準備してきたし、ずっとこうなると言ってきた。そして、今その時が来たんだ。100パーセント、王者になれると思っている」 ──ペレイラ戦の試合展開の予想は? 「正直、どんな試合になるかは分からない。特定の展開を期待しているわけじゃない。集中して、決意を持って、注意深くケージに入るつもりだ。今回のキャンプで大切にしてきたのは、自分自身に集中すること。他のことに惑わされないようにしないといけない。だから、どうなるかは分からないけど、どんな展開にも対応できる準備はできているよ」 ──2015年にアンデウソン・シウバが、トレーニングキャンプで「カリルにKOされた」と冗談を言っていた。その際、当時2戦2勝だったあなたについて、「将来の王者になる」とも。アンデウソンのようなレジェンドが、10年前からあなたを「未来の王者」と言っていたことに関して、思うことは? 「それはよく思い出すよ。特に、自己疑念が湧いてくる時にはね。特に大きな目標に向かっている時には、みんな少しはそういう気持ちを抱えるものだと思うんだ。でも、アンデウソンのようなレジェンドが、俺がまだ2戦しかしていなかった頃から『こいつには何かがある』って見抜いてくれていたんだ。すごく感謝してるよ。それは俺のストーリーの大切な一部で、俺が王者になった時には全てがピタッと合わさるんだ」 ──その言葉でプレッシャーを感じたことは? 「プレッシャーっていうより、ただただ嬉しかったよ。アンデウソンに会った時、彼が俺を受け入れてくれた時のことを思い出すし、俺たちが築いた関係は心地良くて温かいものだったんだ。もちろん、彼が成し遂げたことはすごいし、俺にとって永遠に史上最高のファイターだ。彼のようなキャリアを持ちたいと思っているし、特にMMAの世界では彼が大きなインスピレーションになってる。でも、そんな彼からそういう言葉を聞くと、ただ愛情を感じるんだ。彼は俺を弟のように扱ってくれた。最高だとしか言えないね」 ──ここ最近で、あなた自身に注目度が高まっているのは感じていますか。 「アンソニー・スミスとの最後の試合の後から、新しいファンがたくさん増えたと思うよ。それが本当に嬉しくて、すごくモチベーションになってるんだ。今では、ベガスのどこに行っても、スーパーやモールで、必ず誰かが声をかけてくれるんだ。俺からどれだけ影響を受けたか、教えてくれたりもする。アンソニー・スミス戦以降、その大きな変化を感じてる。今回のキャンプでは、メディアの取材も多くて、10日間くらいトレーニング漬けだから、実際に反応は見れてないけど、もっと多くの人が俺のことを知ってくれたと思う。これからも、誰かに良い影響を与えられたら嬉しい」 ──GLORY出身のグーカン・サキやダスティン・ジャコビーに勝ってきたことで、アレックスを「ラスボス」とみなすファンがいます。そういう見られ方は気にしないですか。 「ファンの視点から見ると、そういう風に捉えるのは楽しいだろうし、アレックスが『ラスボス』だとしたら、今回の挑戦はとてもクールだ。それに、試合に対する興奮や期待がさらに高まると思うし、そういう点で楽しんでもらえるのは嬉しい。いいことだと思うよ」」 ──チェール・ソネンやカマル・ウスマンがあなたの勝利を予想している。勝敗予想が割れ始めたけど、これはアレックス時代にみんなが飽きているのか、それとも正当な評価であなたを勝つと思っているのか、どちらだと思いますか。 「どっちもあるかもしれない。でも、俺を応援してくれる人は、本気で俺を信じてくれてる。逆に、何らかの理由で俺が成功するのを望んでない人もいる。常に、アンチもいるもんなんだよ。誰もが俺を好きになるとは思ってないし、みんなが俺の味方をするとも期待してない。でも、応援してくれる人たちのことは、本当に大事にしてるし、感謝してる。俺が自分の力を発揮できるように応援してくれる、その気持ちはすごく嬉しいよ。その他の人たちのことは、全く気にしていない。俺は自分の仕事をするためにここにいるし、俺自身を信じてるんだ」 ──アレックスが、ショーン・ストリックランドをトレーニングパートナーに選んだことについては、どう感じていますか。 「それはクールだね。実際、最後にショーン・ストリックランドと会ったのは、UFC PIだったんだ。あの時は、ダン・イゲが3、4時間前のオファーで試合(ディエゴ・ロペス戦)に出た後のことだった。PIに行ったらダン・イゲがいたから『すごい度胸だ』って称賛をするために声をかけたんだ。 そしたら突然、ショーンが俺に近づいてきて、こう言ったんだ。『カリル、俺はアホだよ。正直、ちょっとお前のことが好きだ。お前はリベラルだけど、でも全体的にはお前を尊敬してるよ』って。彼が和解を求めていると思ったんだ。だから、俺も『OK、問題ない』って、それで終わった。それ以降に何か言われても、俺の中ではもう『ただのトークだし、気にすることはない』って感じだね」 ──「スーパーシークレットな動きがある」と聞きました。少し教えていただくことはできますか。 「スーパーシークレットだから無理だね。ヒントは、自然に出てくる動きだ。無理に狙う動きじゃない。タイミングが合えば、うまくいく可能性はあるけど、無理に狙ったら成功しないかもしれない。ピースが揃った時にしかできないんだ。だから、誰を相手にしても起こる可能性はある。技の名前は、成功してからつけるよ」 ──アレックス・ペレイラ選手は、足全体を引いて相手のキックをブロックすることがありますが、そこについて気にしていることはありますか。 「いや、特に気づかなかったよ。後ろ足でキックをチェックするみたいな動きや、足を引いてキックをかわすような動きは見たことあるけど、そういうことにあまり注意を払っていないんだ。ケージの中にいて、リアルな状況で、しかもタイトルがかかってる時に相手が襲いかかってくると、全く違った状況になるからね。だから、ネットで見たことや噂にあまり囚われないようにしてる。戦いは本能的で直感的なものだと思うから」 ──格闘技では勢いに乗ると連勝して秀でた成果を上げるファイターが多い。アレックス選手の場合もまさにそうで、彼はずっと無敵状態で、派手に相手をKOしてきた。勢いがつきすぎると、それが過信につながることもあると思う? 「俺としては、彼が過信して入ってくるとは思いたくないんだ。彼がベストな状態で来ると信じたい。もちろん、勢いに乗ることは大切で、それが自信につながることもある。それは良いことだと思うけど、俺たち二人とも、お互いがどんな相手と戦うのかはちゃんと分かっていると思う」 ──2014年6月のプロデビューから10年。ある映像で、ラウントリー選手が一時期300ポンド(約136kg)あって、鬱状態でタバコを吸っていたと話していたのを見ました。それが今、UFCのチャンピオンシップに挑戦できるところまで来た。ここまで来た自分にどれだけ誇りを感じていますか。 「そうだね、本当に遠くまで来たと思うよ。俺がどこからスタートしたか、過去のことが今になってだんだん知られるようになってきたけど、あの頃の自分はもうずいぶん前に、遠いところに置いてきた感じだ。 振り返れば、当時の自分やその時に経験していたことが分かるけど、今は現在の道のりに集中しているんだ。すべての困難を乗り越えたことが本当に嬉しいし、その後も、途中にあるいくつかの壁も乗り越えてきたことが誇らしいよ。俺がそれをやり遂げたことに自分でも誇りを感じているし、チーム、コーチ、家族、そして近くにいる全ての人たちに感謝している。今は、俺の周りにいる人たちと、それから俺を支えてくれる人たちが何よりも大事なんだ。彼らのおかげで責任を持って前に進めている。 このタイトルマッチは大きなことだが、ある意味では、まだ始まりに過ぎないと感じている。タイトルマッチに向けて準備していて、これは俺のキャリアの最高潮だと思うけど、個人的な成長や、これからの自分を考えると、まだこれが始まりなんだと思っている」 ──何度か山に籠もってトレーニングをしていると聞きましたが、パークシティでのトレーニングは高度に順応するため? 「その通り。早めにここに来て準備を整えたかったから、かなり長く滞在したよ。メディア対応のために山から下りてきたけど、それまではずっと山にいて、毎日トレーニングしてた。ランニングやグラップリング、全部そこでやってたよ。 本当に素晴らしい場所だね。ソルトレイクシティとパークシティは、俺の中では世界の好きな場所トップ10に入るよ。これまでいろんな場所に行ったけど、ここは本当に美しいところだ。ユタのホッケークラブの試合にも行ったけど、すごく楽しかった。めちゃくちゃ歓迎してくれたし、観客もチームも最高だった。エキシビションマッチだったのに、みんな全力で応援してたよ。ファンもすごくサポートしてくれるし、コーヒーショップも美味しいし、食べ物も最高だ。まだ雪は降ってないけど、俺はスキーが好きだから、パークシティに行ってスキー場を見ただけでワクワクするよ。絶対にまた何度も訪れると思う」 ──試合が間近に迫って、ついに何年ものトレーニングと努力の成果を出す瞬間が来ました、どんな感情が湧いてきていますか。感情的になるのを避けているのか、それとも感情ごと全てを受け入れていますか。 「俺は全てを受け入れているよ。感情含めて、この瞬間を楽しんでるんだ。ポジティブに、感謝の気持ちを持って、幸せでいようとしてる。毎日こうやってPPVのメインイベントで戦って、タイトルに挑戦できるわけじゃないからね。だから、毎日目が覚めた時、日中、そして寝る時にも、この瞬間に感謝してるんだ。自分が今いる場所に感謝してる。それが、感情やプレッシャーに対処するために役立ってるんだと思う。 今ここにいることが嬉しいし、準備が整っていると自覚できていることが嬉しい。コーチやチームにも感謝してる。彼らの献身があるからこそ、ポジティブなエネルギーに包まれているんだ。もちろん、緊張や不安はいつか来るだろうし、その時はその時だ。でも今、この瞬間にいる限りは、ポジティブに、心を満たしていこうとしてるよ」 ──もしあなたがテイクダウンを狙ったらファイトマネーの一部をチャリティに寄付してほしい、ってアレックス・ペレイラが言っていた。それについてどう思う? 「いや、別にテイクダウンを狙うかどうかに関わらず、俺はチャリティに寄付するよ。賭けみたいなことは好きじゃないし、そんなことはしないけど、もし『チャリティに寄付してほしい』と言われたら、寄付するよ。俺はテイクダウンを狙う予定はない。これまでも何度も言ってきたけど、それは俺のプランじゃない。でも、もし何かが起こって、仕方なくテイクダウンを狙わなきゃいけない状況になったら、それは仕方ない。これがMMAだからね。 もし彼に何か強烈な一撃をもらって、自分を守るためにそうせざるを得ないなら、やるかもしれない。でも、俺のゲームプランは、ディヴィジョン1のレスラーみたいに組み合うことじゃない。俺のファンならみんなそれを知ってるはずだ。俺が言いたいのは『これまで通りの俺を期待してくれ』ってこと。タイトルマッチだからとか、相手がストライカーだからって、いつもと違うことを期待しないでほしい。これまで見てきた俺を、そのまま期待してくれればいい。だから、テイクダウンするかどうかに関係なく、俺はラスベガスのチャリティに寄付するよ。ラスベガスは俺の故郷だし、ベルトを持ち帰る場所だからね。そこには助けが必要な施設や基金がたくさんある」